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第一回「節電と幸せ」
アイディア&エッセイコンテスト
受賞作品

エッセイ部門

特別賞

テレビを消して
柳澤 和さん(群馬県佐波郡)

3月に起きた今回の大地震を受け、全国的に節電に取り組む家庭が増えてきました。長野県にある私の実家は比較的涼しい地域であるため、エアコンの電源を切る必要もなければ、熱帯夜に頭を悩ませることもないようです。一人親元を離れ群馬県で暮らす私と言えば、設定温度を28度にするのが精一杯の節電です。

そんな中、ある日突然、長野の実家でも何か節電に協力できないかということで、テレビの使用を控えるようにすることになったと、
実家の母から電話がかかってきました。母曰く、夕食中にテレビを見ることをやめ食後もできるだけつけないようにすることにしたそうです。

正直この提案にはびっくりしました。なぜなら我が家は、私が実家で生活してきた約17年間ほぼ毎日夕食時にはテレビがついていたほどの、テレビ好きな家庭だったからです。
だから、私は「すぐに諦めるだろうな」などと予想を立て、面白半分に経過をうかがうことにしました。
テレビを消した当初は、夜9時頃に母や姉から電話やメールが届くようになりました。
おそらくすることも、見るものもなく手持無沙汰だったのでしょう。それからしばらくして、メールも電話も来なくなりました。「テレビの電源が入ったのだな」そう確信しました。

7月の初めごろ、実家に一度帰省することとなりました。すっかり節電のことなど忘れていた私の目に飛び込んだのは驚くべき光景でした。なんと、我が家のリビングルームからテレビが消えていたのです。正確には場所を移しただけですが、家族が一日のほとんどを過ごすリビングからテレビがいなくなるなんて想像もしませんでした。驚いている私に母が「テレビなんてなくても意外とやっていけるものよ」と自慢げに言いました。

夕食の時間になり、父を含めた家族4人での久しぶりの家族団らんがやってきました。すると無口な父が「今日は軽井沢の奥のほうでしごとがあったよ。夕方に結構強い雨が降ったけど、こっちはどうだった」と口を開きました。「こっちは大丈夫だったよ。でも、変な天気だったよね」と姉がいつものことのように答えます。この光景を見た瞬間私はすべてを悟りました。「これか」そう思いました。テレビが消えた我が家には、家族の時間が生まれていました。テレビがついていたあの食卓では、みんながテレビに夢中で、一人ひとりの話には興味を示していなかったのです。テレビが消えた食卓には、確かに灯った新しい何かがありました。

食事を終えた後も、父と姉は会話を楽しみ、私と母は片付けをしました。その後も、時間はゆっくりと流れ、床に就くまでが充実した時間のように感じられました。各々がやるべきことを、こなしつつ、縛られない時間を過ごしているように感じました。

私が長野を離れる朝、母は「最近は充実している気がするの。疲れがあっても、溜まっていく感じがきえたの。何かあったら連絡してきなさい」と言いました。幸せそうな顔でした。

一人新幹線に乗りながら、家族の変化をもう一度振り返り、不思議な気持ちになると同時に、幸せな気持ちにもなりました。

それから私は極力テレビをつけることをやめるようになりました。私にも協力できる小さな節電であり、家族と同じことをしているということが、何となく誇らしい気持ちにしてくれるからです。テレビを消して、外を眺めたり、友達と食事をしたり、勉強や読書に時間を割くようになりました。そして何より、最近では家族の声を聴く時間の余裕も生まれ、以前にも増して幸せな時間が流れている気持ちがしています。一人暮らしのさみしさをテレビが埋めてくれていたのではなく、ただ自分が甘えていただけだと知りました。

今年の夏は猛暑です。日中は35度を超える地域が殆どでしょう。それでも何か節電に取り組みたいと考えている方に、テレビを消すことをお勧めします。きっとこの夏は、あなたとあなたの家族にとって素敵な夏となることでしょう。家族の絆を深めることが、誰かのためになるなんて、素敵なことだと思いませんか?

※アイディア部門の大賞については、今回該当作品をなしといたしました。

※コンテストの概要はこちらでご確認ください。

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