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田中康夫と浅田 彰の憂国呆談2

森林間伐から特定農作物まで!

田中さんが参議院予算委員会での質疑を終え、数日経ったある日の午後。東京・日比谷の一室で、浅田さんとのふたりの対談がスタート。中国の冷凍“猛毒”餃子が巷で大きく騒がれていた折、まずはグリーンな話題から。会話の着地点はいずこへ?

田中:

日本は国土の67%以上が森林なの。森林国に思われているカナダですら3割台。『ウォレスとグルミット』で登場した“ひつじのショーン”が大人気のイギリスは牧草地が大半で森林はわずか2割台。だけど、日本は戦時中に伐採し尽くした山には例外なくスギやヒノキの針葉樹を植林した。広葉樹と違って“2残1伐”と呼ばれる2列残して1列切る間伐で、光が射し込むようにしないと下草も生えず、幹も太くならない。こうした間伐は樹齢45年から60年の間にしないと手遅れだから、戦後に造林した針葉樹は待ったなし状態なの。ところが、間伐していない針葉樹林が7割近いと。

前にも言ったけど、林野庁の予算は年間3700億円しかなくて、森林の整備に使われているのはそのうちの1割もないのね。残りは環境破壊の大規模林道、コンクリートや鋼鉄製の谷止工……正確を期して資料を出しますね……ええっと、日本の森林面積が2512万ヘクタールで、人工林が1140万ヘクタール。45%が人工林ってこと。ところが、年間35万ヘクタールしか間伐をしていないので間伐済みの人工林は400万ヘクタール。で、洞爺湖サミット開催国となって急遽、今後6年間は55万ヘクタールずつ、合計330万ヘクタール間伐をやることになった。でも1140万ヘクタールから引き算すると、全体の3分の1に当たる410万ヘクタールは6年後にも間伐されずに手つかずって話。

何度も繰り返すけど、針葉樹を植林したのは昭和20年代半ばから30年代半ば。現時点で樹齢55年から45年。45年になると、大体直径が32センチになって、その段階までは手入れをしなくても、雨後の竹の子みたいに伸びてくるわけですよ。でも、その後の15年間、樹齢60年に達するまでの間に、2残1伐で間伐しないと、光が入らないから木は太くならない。針葉樹はもともと保水能力が弱いから、さらに山は荒れちゃう。

でね、間伐すると80年から100年の木で直径64センチと、倍の太さになるんです。現在の32センチ段階でも通常の柱材が2本は取れるけれど、64センチになると、少なくても12本から多くて15本は取れる。さらに効率性でいうと、直径32センチの木から柱材2本取るには極論すれば、製材所の電動の鋸に5回以上当てなければならない。でも64センチの木は20回で粗挽きの柱が15本取れる計算になる。日本の森林は価格競争力がないっていうけれど、すでに樹齢80年から100年で64センチになってるオーストラリアやカナダと単純比較するからなの。その意味でも40年後のためにも間伐が急務。

なはずなのに、補助率という役人発想が間伐促進を妨げているんだなぁ。森を間伐する場合には、国が費用の5割を持ちます。で、各自治体が3割負担で、持ち主が2割負担。だけど山間地の小さな自治体では、山が荒れていて間伐したいと思っても、その2割の金が出せないんです。もっといえば、年金じゃないけど台帳を洗っても、その持ち主が分からないっていう山林が372万ヘクタールもあるんです。だから手が出せないと。でもね、家があって人が住んでいるにもかかわらず、有無を言わさず撤去しちゃう非情な土地収用法があるんだから、人が住んでいない森林こそ全額国が出して間伐をやって、それでも名乗り出てこなければ、伐採する40年後には国や自治体や、間伐した会社に木の所有権が移っちゃう法律改正でもすればノープロブレームな話であってね。

とにもかくにも、林野庁が森林整備に使っている予算は年間300億円ポッキリ。一方、群馬県の山奥で計画中の、地元では福田ダムとも言われてる不要不急、じゃなかった不要無用な八ツ場ダムは総事業費が8800億円。ニャンと森林整備に使うお金は、25分の1とか27分の1なわけですよ、巨大なダム1基の。この際、洞爺湖サミットに向けて、日本は京都議定書の数値を満たすだけでなく、すべての針葉樹を間伐します、と宣言したほうが注目されるのにね。

その昔に山国で僕が知事をしていた頃には、全日空や日本興亜損保といった企業に森林整備で協力してもらったの。だけど、年間100万円ぽっきり。それでも地域住民が間伐するから優に5ヘクタールはできちゃう。その森には企業の名前をつけて、年に2回は社員も家族連れで下草刈りのお手伝い。で、地元のお年寄りが作った料理を一緒に食べて交流ってのを実行したの。旧態依然な森林組合が請け負う森林整備でも1ヘクタール35万円程度。その3分の2に当たる22万円が人件費。これぞ21世紀の労働集約的産業で、だから、100時限の技術講習を無料で行って、資格を取得した山あいの土木建設業者や都会からIターンした人に参入してもらったの。

浅田:

そういうことを公共事業としてやればいいんだよね。こまめに手入れして森林を蘇らせれば、二酸化炭素吸収源にもなるし「緑のダム」にもなる。それが真のニュー・ディールでしょう。

田中:

とはいえ、全国25県で県民税に上乗せ徴収が決まった森林税は要注意の悪税だよ。高値受注な随意契約の既得権益にアグラをかいてきた森林組合の所得保障に“流用”される場合が大半だから。森林整備こそ、地域の土木建設業やIターン者のNPOも参加可能な競争入札を徹底させるべき。僕が知事時代に行ったようにね。

田中 康夫

田中康夫 たなか・やすお
1956年東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。大学在学中に『なんとなく、クリスタル』で文藝賞受賞。長野県知事、参議院議員、衆議院議員を歴任。最新刊は『33年後のなんとなく、クリスタル』。http://tanakayasuo.me

浅田 彰

浅田 彰 あさだ・あきら
1957年兵庫県生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。京都造形芸術大学教授。83年に出版されたデビュー作『構造と力─記号論を超えて』はベストセラーに。

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