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田中康夫と浅田 彰の憂国呆談2

川端龍子の会場芸術から、秋篠宮とローラの発言、1979年に始まったグローバル資本主義の行く末まで。 photographs by Hiroshi Takaoka text by Kentaro Matsui

東京・大田区の『大田区立龍子記念館』を訪れた田中・浅田両氏。川端龍子自身が設計した自邸や画室、庭を見て歩きながら、館内では「会場芸術」と呼ばれる龍子の巨大な日本画を鑑賞。近代日本画に革新を起こした画業を振り返った。一方で、いまだ「革新」がなされないまま、グローバル資本主義の荒波に呑み込まれている日本の現状を憂えた。

浅田

今年4月で平成が終わるけど、皇位継承後の儀式として行われる大嘗祭について、宗教色が強い行事だから国費(宮廷費)じゃなく皇室の私的活動費(内廷費)でやるべきだと秋篠宮が提言。「身の丈にあった儀式にすればと思うが、宮内庁長官などは聞く耳を持たなかった」と。ちなみに前回、今上きんじょう天皇が即位したときは国費(宮廷費)から22億4900万円が支出され、2日間の大嘗祭だけに使う大嘗宮の設営に14億円ほどが充てられたらしい。内廷費は3億2000万円しかないけれど……。

田中

5月1日に即位する新天皇が改めて即位を宣言する即位礼昇殿の儀は今回も祝日として10月22日に設定。これに対して大嘗祭は今の天皇が即位した前回も、宗教色が強いので「政教分離」の原則から当時の自由民主党単独政権は国事行為とせず、宮内庁が主体となる皇室行事とする一方、公的性格があるとして宮内庁の公費である宮廷費を支出した。

「平成の大嘗祭の時も、その頃はうんと若かったですし、多少意見を言ったぐらいですが、このすっきりしない感じというのは今でも持っている」と53歳を迎えた昨年11月の会見でも述べた秋篠宮は更に具体的に踏み込んで、「天皇の代替わりに伴う諸行事は国民の理解のもとで執り行われるべきだ。大嘗宮を建てず、宮中にある神嘉殿しんかでんで行っても儀式の心が薄れる事はない」と提案しているのね。それも生前退位の意向を皇太子と彼に今上天皇が伝えた頃から前任の宮内庁長官にも現在の長官にも、毎年の新嘗祭に使用されている神嘉殿ならば、内廷費の範囲内で賄えるじゃないかと繰り返し述べてきたと。

ところが、「親の心子知らず」じゃないけど、総予算は前回より4億7000万円増加の27億1900万円。今年11月14日、15日の大嘗祭が終わると取り壊される皇居・東御苑に新造の大嘗宮も5億円増加の19億円。伊勢神宮に集団参拝したのが「支持者」から不評を買ってショックを受けているらしい立憲民主党の枝野幸男や村田蓮舫は「大嘗宮を設営する理由は何があるんでしょうか? 神嘉殿じゃダメなんでしょうか?」と会見で述べてみたら。秋篠宮にとってはありがた迷惑極まりないだろうけど。

関西国際空港の建設時に採石場となった跡地を「再生」すべく、淡路夢舞台と称する庭園を造成して「ジャパンフローラ2000(通称淡路花博)」が開催された2000年3月、開会式に訪れた彼が、土砂の削り取られた斜面に出現したコンクリート枠の中に花が咲き乱れているのを見て、「新しい環境の祭典ですね」と呟いて、案内していた面々が固まった逸話を思い出したよ。

浅田

そもそも、明治天皇の即位のとき、服装から何から大幅に変えちゃったんで、昔からの伝統ってのは嘘なんだよ。一世一元(天皇一代に元号一つ)もその時から。そもそも今どきプログラムの変更が大変だとか言ってるくらいなら、公文書でも何でも西暦で統一すればいいと思うけどね。キリスト教の暦が普遍的ってわけじゃないけど、元号より便利なんだから。

田中

メートル法を拒んで世界で唯一、ヤード・ポンド法に固執し続けるアメリカ合衆国に追随して日本も尺貫法に戻してこそ“美しい国”だと、ハワイ大学をご卒業の櫻井よしこ女史は今こそ主張すべきかも知れないね。それはともかく、4月28日から5月6日まで祝日・休日となって、土曜日の27日も加えると10連休となるのを、はたして天皇一家はお望みなのだろうか、と問題提起する日本会議のメンバーが一向に現れないのは何故なんだ? 「ことほぐ」と振り仮名がないと誤読しちゃいそうな「言祝ぐ」なあんて単語を使って、「ご退位とご即位を国民こぞってお祝いするゴールデンウィークとなりそうですね」と述べた次のコーナーで、すでに10連休は羽田、成田発着の海外旅行ツアーが満員御礼状態などと平然とレポートする報道機関は不敬罪だと「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は言うべきでしょ(苦笑)。

浅田

その靖国神社だって明治時代につくられたもの。本来、打ち負かした敵がたたるのを恐れて神として祀るのが日本の伝統なのに、天皇の側で戦った戦死者だけ祀ってるのはおかしいって、最近亡くなった梅原猛も言ってた。西南戦争で賊軍となった西郷隆盛だって祀られてないんだから。

田中

靖国神社の宮司だった小堀邦夫が「今上陛下は靖国神社をつぶそうとしている」問題発言で退任したけれど、政治学者の白井聡の分析が鋭かった。すべての戦死者の霊は靖国に戻ってきているという虚構に対して、今上天皇は皇后と共に海外の戦地にまで慰霊に向かい、親の代の罪をあがなおうとしていて、その場合、霊は戦地にいることとなり、天皇は身を挺して靖国の正当性を問うているのだと危機感を抱いたと。実に乱暴で幼稚な小堀の発言だけど、まさにそうだと思うよ。被災地にも足を運び続けた30年の「祈りの旅」に、国民の多くは少なからず感銘を受けているからね。

ところが、生前退位を巡って官邸が設けた「有識者会議」のヒアリングで「天皇は宮中で祈っているだけでよい」と述べたようなエセ「保守派」は今回も上から目線で、政治的な発言をする秋篠宮は怪しからんと不謹慎にも愚痴ってるらしい。

浅田

むしろ天皇家の祭祀に国家予算を使わないことで政教分離を徹底するって正論なのにね。

田中

それにしても、救急以外の外来診療が休診となる医療機関の現場も、前代未聞の10連休となる東京証券取引所も大丈夫なのか。株価がすべての経済指標に優先する政治を7年以上も続けてきた日本は、海外の株式市場で「リーマン・ショック級」の乱高下が起きても対応不可能なんだよ。皇室を「政治利用」してるのは一体、誰なんだと諫言したいね。辺野古埋め立て問題に関してローラがインスタグラムでホワイトハウスへの請願署名を呼びかけたら、タレントが政治的な発言をするな、CMから降板させてやる、と脅す連中がSNSにワラワラ沸いてきたけど、クイーンのブライアン・メイも呼びかけたら途端に沈黙しちゃって、逆に意気地なしのチキン呼ばわりされる羽目に陥った。「国民の生活が第一」と小沢一郎が唱えてた時期があったから「生活」という単語に手垢が付いちゃってるけど、すべての物事は政治的なんで、政治が特別と考えるほうがおかしいわけだ。

2月24日が投票日の「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票」に不参加を表明している(1月23日現在)、普天間基地の地元の宜野湾市、沖縄市、うるま市、石垣市、宮古島市の5市長は、多数決という「民主主義」の手続きを経て県議会が設けた条例に基づく投票で、辺野古沖合への移設反対票が上回るのが悔しいという駄々っ子に過ぎない。とはいえ、膠着状態が続く辺野古問題の具体的解決に向け、「ささやかだけど、たしかなこと」としての一歩は踏み出すべきでしょ。

そもそも、アメリカ海兵隊キャンプ・シュワブの沖合を埋め立てる計画は津波と高潮の課題を抱えたうえに、普天間基地の38パーセントのキャパシティしかないんだよ。滑走路の本数こそ2本に増えるけど、どちらも1800メートル。2700メートルの普天間よりも短いからアメリカ政府監査院(GAO)は、有事には那覇空港を活用するしかない、と報告書を上げている。

浅田

だったら嘉手納基地との合併案がある。嘉手納は空軍基地で、海兵隊は別の基地が欲しいって、それは米軍内部の事情でしょう。「思いやり予算」まで出してるんだから、米軍地位協定の改定も含め、言うべきことは言うってのが、正しいナショナリズムじゃないの?

田中

まったくだ。青森県には防衛省が設置し、日米地位協定第3条に基づき米軍が管理し、航空自衛隊と米空軍が共用する三沢空港があって、しかも国土交通省が設置・管理する航空ターミナルには東亜国内航空、日本エアシステムを経て日本航空が離発着し続けている。海兵隊と空軍の「縦割り行政」を超えて、3700メートル滑走路2本の嘉手納の「共用」を外交交渉するのが同盟国ニッポンの仕事だよ。

田中 康夫

田中康夫 たなか・やすお
1956年東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。大学在学中に『なんとなく、クリスタル』で文藝賞受賞。長野県知事、参議院議員、衆議院議員を歴任。最新刊は『33年後のなんとなく、クリスタル』。http://tanakayasuo.me

浅田 彰

浅田 彰 あさだ・あきら
1957年兵庫県生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。京都造形芸術大学教授。83年に出版されたデビュー作『構造と力─記号論を超えて』はベストセラーに。

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