ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

田中康夫と浅田 彰の憂国呆談2

自由学園のデザインから、閉校した文化学院、カルロス・ゴーンの解任、水道の民営化まで。 photographs by Hiroshi Takaoka text by Kentaro Matsui

東京・西池袋で、使いながら文化財的価値を保存する動態保存のモデルとして運営されている『自由学園明日館』。フランク・ロイド・ライトが設計した建物を見学し、喫茶室でお茶を飲んだ田中・浅田両氏。自由学園の教育から、閉校した文化学院、世界を震撼させた「カルロス・ゴーン解任」について語り合った。

浅田

今回は東京・西池袋の自由学園明日館に来てる。帝国ホテルの設計のために来日してたフランク・ロイド・ライトに羽仁吉一はによしかず・もと子夫妻が弟子の遠藤新を介して依頼し、設計してもらった建物。1921年に竣工した明日館は、学校が東久留米市に移転した後も文化行事や結婚式なんかに使われてるらしい。帝国ホテルと同じ大谷石を使ったアーリー・モダニズム建築で、椅子や照明のデザインも秀逸。重要文化財に指定されるだけのことはある。

田中

ライトの内装は日本に合うね。京都にあってもしっくりくる雰囲気。

浅田

垂直より水平を強調したデザインで、木にもこだわってる。ライトは日本が好きで、岡倉天心の『茶の本』にも影響を受けてるし、浮世絵のコレクターでもあって、伊藤若冲じゃくちゅうを中心としたプライス・コレクションで知られるジョー・プライスも若い頃ライトから日本美術を学んだ。

田中

自由学園生活工芸研究所のコルクの積み木は、角が当たっても痛くない優れもので妹と一緒に愛用したよ。今では通販サイトもあって、誕生祝いに贈ったりしている。羽仁もと子が考案した家計簿も、その項目を見ると羽仁イズムが感じられる。母も使っていたなぁ。

浅田

自由学園ができた同じ年に西村伊作の文化学院も開校してる。彼は大逆事件で処刑された和歌山県新宮市の大石誠之助の甥。一族の材木資本を背景に東京につくった学校は、与謝野鉄幹や晶子も教鞭を執り、日本のモダニズムの拠点となった。文部省に干渉されない自由な学校を目指したために専修学校としての運営を余儀なくされ、昨年度に閉校したのは残念だね。この2校は女子教育や女性解放に力を入れた。モダニズムとフェミニズムは最初から密接に関係してるんだ。

田中

戦時中に文化学院は「思想的に怪しからん」と強制閉鎖されて西村伊作も逮捕。軍部が接収した校舎は連合軍捕虜収容所となったんだね。戦後に再開されるものの次第に経営が苦しくなって2005年にはビックカメラの創業者が支援に乗り出す。蔦の絡まる築70年の校舎も耐震性を理由に、ビックカメラが筆頭株主のBS11のスタジオも入るビルへと変わり、晩年の与謝野馨が院長となる。その後、御茶ノ水から両国へと学院は移転し、程なく幕を閉じた。

田中 康夫

田中康夫 たなか・やすお
1956年東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。大学在学中に『なんとなく、クリスタル』で文藝賞受賞。長野県知事、参議院議員、衆議院議員を歴任。最新刊は『33年後のなんとなく、クリスタル』。http://tanakayasuo.me

浅田 彰

浅田 彰 あさだ・あきら
1957年兵庫県生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。京都造形芸術大学教授。83年に出版されたデビュー作『構造と力─記号論を超えて』はベストセラーに。

ゴミ、捨てんなよ!

Copyright © sotokoto online, Inc. ALL rights reserved.