ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

福岡伸一の生命浮遊

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vol.162 フルーツフライの物語

生物学では、ラットもしくはマウスが実験動物として多用される。ラットは大型のネズミ。マウスは小型のネズミである。両方とも哺乳動物であり、臓器の仕組みも、必須アミノ酸の種類も、代謝の回路も基本的にヒトとほぼ同じなのでモデル動物として使えるのである。妊娠期間は20日と短く(それゆえ別名はハツカネズミ)、文字どおりねずみ算式に増えるが、性的に成熟して次の世代をつくれるまでに2か月半ほどかかる。

vol.161 マイケル・ヤング氏のノーベル賞

毎年10月の第1週は、ノーベル賞のシーズン。私は、解説要員として新聞社で待機していた。まじめに大学で研究に邁進していれば、あるいはもらう側になれたかもしれないが、生半可なモノ書きになってしまったせいで、もっぱら解説する側に回っている……というのは冗談として、昨年の大隅良典氏、一昨年の大村智氏、梶田隆章氏、その前年の赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏など、このところ日本人が相次いで受賞しており(中村修二氏は受賞時、米国籍)、まるでオリンピックのメダル獲得ニュースに似た様相を呈している。

vol.160 ロックフェラー大学にて

私は現在、日米を行ったり来たりしながらの生活を送っている。米国の拠点は、ニューヨーク市にあるロックフェラー大学だ。かつて──もう30年近くも前のことだが──私はここでポスドク(ポスト・ドクトラル・フェロー)として研究修業を送っていた。日本語に訳すと「博士研究員」となるこのポジション、有り体に言うと“研究奴隷”、いや、雀の涙ほどのわずかな給金があるので、奴隷というのは言い過ぎだが、今の言葉でいうところのブラック企業の従業員。

vol.159 科学的発見は、一等賞にしか……

科学的発見は、一等賞にしか表彰台が用意されていない。つまり第一発見者だけがその功績を認められ、発明であれば、一番最初にそれを成し得た人物のみが勝利者としての栄誉を得る。栄誉だけでなく、賞金や特許権などの金銭的報奨も独り占めする。二番手、三番手に表彰台はない。

vol.158 サンガー会の思い出

ニセモノのヌクレオチド、つまりダイデオキシヌクレオチドを使って、DNA合成を途中で止め、その止まったところのヌクレオチドの種類を読み取ることによって、順次、DNAの遺伝暗号を1文字ずつ解読していく。根気のいる、しかしこの画期的な方法の原理を最初に編み出したのが、英国の生化学者、フレデリック・サンガーである。

vol.157 遺伝子配列解読法

AGGCCTGGCTCGAATGACTT……。このようなA、T、C、Gの4文字からなる文字列が遺伝暗号の配列である。A、T、C、Gは、それぞれアデニン、チミン、シトシン、グアニンと名づけられたヌクレオチドという化学物質で、互いに似ているが少しずつ構造が違う。これが化学結合を介して、数珠玉状に連結しているのが、DNAである。

vol.156 GP2遺伝子を取り出す

直径10センチほどの円形のナイロンフィルターが何枚も目の前に並んでいる。一見、ただの白い薄切りの円盤。まさに千枚漬けだ。肉眼では見えないが、ここにはミクロなレベルで、重要な現象が積み重なっている。まずナイロンフィルターの表面には点々と、ライブラリーのcDNAが固定化されている。

vol.155 探査針はGPS

さて、いよいよ遺伝子の隠れ家を突き止めるときがきた。少し前の回に書いた千枚漬けの話を思い出していただけるだろうか。直径10センチほどの白いナイロン製の薄い円盤のことを千枚漬けに例えた。わたしたちはこの円盤のことを通常、フィルター、もしくはメンブレンと呼んでいる。

vol.154 アイソトープのラベル

前回は「宝探し」の準備の手順を説明した。今回はその続き。DNAライブラリーに由来するコロニーが固定された“千枚漬け”(円形のナイロンフィルター)を入れたジップロック・パックに、宝物を探査するためのプローブ(短い一本鎖DNA)を混ぜ、パックの入り口をシールして密封する。

vol.153 ナイロンフィルターを
漬け込む

それは一見、千枚漬けの作業工程に似ている。私は京都で学生生活を送ったので、その様子を見たことがあったのだ。京都名産の京野菜である聖護院かぶの皮をむき、薄くそぎ切りにする。直径10センチあまり。それは円形のナイロンフィルターにそっくりだ。それを樽の中に一枚一枚ていねいに並べて敷き込んでいく。

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