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駒崎弘樹の日本の第三の道 問題発掘から解決へと導く鍵は、正しい言論のあり方にある。

荻上: 僕が「いじめ防止対策基本法」に関わったときは、すでに「NPO法人ストップいじめ!ナビ」を作り、いじめ対策の方法論や知識があったから、法律に対する問題点を細かく突っ込めました。議員たちの思い付きのアイデアに対して、一つひとつ研究や事例を挙げて、丁寧に説明しなくてはいけない。その時も、選挙の年だったので、スムーズに動いた年でした。

例えば、自殺対策支援センターライフリンクの清水康之さん、チャイルドラインの太田久美さんなど、僕のNPOには、NPO界のトップ選手みたいな人がいるわけです。だからパイプがもうすでにあり、ドアも開いていた。そして、知識のストックも世論もあり、メディアも注目していた。でもこれらの条件のうち、どれか欠けていたら、なかなか動かなかったでしょう。

駒崎: そうなんですよね。すべてが揃うというのがなかなか難しい。

荻上: 保育の問題は少し、パチンコ台のチューリップが開いたような状況になっているでしょうから、放り込むなら今ですね。

駒崎: そうそう、やるなら今しかない感じなんです。

荻上: 他の分野で、なかなか「チューリップ」を開くことができない分野ってのが、多々あるわけですよね。

駒崎: やっぱり小異を捨て大同に就いて、本当はそれぞれ違うんだけれど「この目的に対しては一緒に頑張ろうぜ」みたいにやれたら、割とパスもつながりやすいんだけれど……。いがみ合ってまとまらない業界は、チャンスがきても一丸となって要望を出せないからうまくいかない。もったいないんですよね。

荻上: 例えばフリースクール業界でも、様々な対立があります。今度、議員立法でやろうとしている「多様な教育機会確保法(仮称)」は、業界内では賛否がまっぷたつに割れている。賛成派はフリースクールを義務教育の一環だと認めることを歓迎するけど、反対派は、法や権力の介入によって、自由にできていた「フリースクールらしさ」が失われ、家庭が既存学校の延長にされてしまうと恐れる。

そうやって浮き彫りになったさまざまな争点を整理していきながら、まとまる部分を豊富に盛り込み、双方の落としどころを探る。そうした試みはどのような分野でもやはり重要ですね。

いじめ防止対策基本法
いじめをめぐる問題が深刻化し、社会問題となったことを受けて定められた法で2013年6月より施行。いじめの防止、早期発見についてだけでなく、その対処や関係者の債務など、幅広い範囲で定められている。
NPO法人ストップいじめ!ナビ
チキさんが代表を務めるNPO法人。「ストップいじめ!ナビ─今すぐ役立つ脱出策」(http://stopijime.jp)にて情報発信を行っている。そのほか国会や行政への提言、マスコミとの連携と提言、講演会の開催、いじめ研究や情報の紹介、学校との連携などの活動を行っている。
自殺対策支援センターライフリンク
「生き心地のよい社会」の実現をめざして自殺対策に取り組むNPO法人。2006年に成立した自殺対策基本法で約10万人の署名を集めた。全国各地でシンポジウムなどの集会を行っている。
チャイルドライン
いじめや児童虐待など悩みをもつ18歳までの子どもに電話カウンセリングを行うNPO法人『チャイルドライン支援センター』のこと。子どもの話を何でも聞き、相談するだけでなく、「一緒に考える」ことを大事にしている。
多様な教育機会確保法(仮称)
保護者が作成した学習計画を市町村教育委員会が審査・認定することを条件に、登校が難しい小中学生が通うフリースクールや家庭での学習を義務教育として認める法案。当初は2017年の成立を目指していたが、2016年現時点でも審議は続いている。

ゴミ、捨てんなよ!

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