ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

駒崎弘樹の日本の第三の道 佐々木さんの「優しいリアリズム」、その「優しい」とは?

駒崎弘樹 こまざき・ひろき × 佐々木俊尚 ささき・としなお

佐々木: 最近特に思うのですが、世の中にはあまりに非当事者的な言説が多い。やはり、常に当事者性を持つことが大事ですよね。

駒崎: 「役人や政治家はバカな奴ばっかりだな」とTwitterでつぶやき、「神の視点」から評論するのではなく、その領域に踏み込んでほしい。そうすると、物事には複雑性があることに気づく。たしかに当事者として複雑性と関わるのは面倒くさい。覚悟や決断が求められますからね。それでは当事者として関わらないのであれば、せめて「問題や課題は複雑なんだ」と受け入れる心の傾きぐらいは共有できないかなと思っているんですね。

佐々木: 世界は、単純に白黒つかずグレーなんですよね。そのグレーの部分を共有できる、ある種の「優しさ」を持った文化をつくるしかないですね。Twitterで、「まっとうな議論」をやろうと思っていると「まっとうな人」が集まってくる。罵っている人の周りはそういう人しか集まらない(笑)。罵りだけでは建設的な文化とは言えないし、政治勢力にはならない。まっとうな議論を続けていくと、やがては新しい政治勢力になりうるんじゃないでしょうか。それを支える勢力というのは必要なんじゃないかなと思いますね。

駒崎: そのアイデアに少しつながるかもしれないですけど、新しい「アソシエーション(組織)」や「結社主義」のようなものを常々考えています。アメリカに留学して驚いたのは、「アメリカは、アソシエーションでできている」ということでした。教会、酒場、図書館、NPO。日本にもこのようなアソシエーションはあったかもしれないけれど、もはや存在しない。

今、日本は「超高齢社会」という、世界が経験したことのない領域に踏み込んでいる。お年寄りが多いから、子どもたちや次世代に良いと思われる中長期的な投資が難しい。そういった時に、何が必要になるかというと、組織によるロビイングです。政治的な意思決定を下す人たちにリーチして、投票行動を経ないでも政策立案に携わり、実際に政策を動かしていける。この行動によって数の論理とは別の回路が形作れ、もっといろんなものが変えられる。

「官僚や政治家は人の話を聞かないよ」とみんな言うけど、官僚たちもアイデアを求めているし、政治家も手早く実績が欲しい。憲法改正のような話はなかなか前には進まないけれど、小さなバグはなんとかしようと、前向きだったりする。利害が一致しているのであれば、小さな結社がミクロなバグを改革していくというような、社会変革のありようというのが描けないのかなというふうに思っています。

佐々木: そうですね。みんな、あまりにもいろいろな「神話」に絡み取られていて、例えば「労働者の管理」と言い出した瞬間に、リベラルな人は「人間を管理するなんてけしからん!」と言う。保守の人は「国のために働くんだから当然だろう」と言う。これは、「管理」という言葉が持っている神話性に引きずられているだけです。「管理」という言葉は単なる「マネジメント」なわけで、イデオロギーで語る必要は全くない。

駒崎: ええ。労働法制の話になると決まって「残業代ゼロになるの? けしからん!」みたいな感じになってしまう。実験をやって、「結果がよければ広げ、ダメだったらやめよう」ということも許さなくては。

優しさ
佐々木さんの新刊『21世紀の自由論』(NHK出版新書)で、これからの社会のあり方として掲げられた「優しいリアリズム」。前編でフォーカスしたのは「リアリズム」だが、それだけでは冷たい世の中になってしまう、と「優しさ」の必要性も説く。後編は、そこからスタートする。

ゴミ、捨てんなよ!

Copyright © sotokoto online, Inc. ALL rights reserved.