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伝説の流転企画「憂国呆談」が『ソトコト』でサステイナブルに展開中!
帝国ホテルのコンファレンス・ルームより、希代の論客ふたりが送るロハスな社会のためのクロストーク。
今回は例の日本語版ガイドブックから、給食をめぐる、日仏間の相違まで、憂国的食育論が飛び交います。
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憂いゴト
ミシュランから食育まで!
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2008年1月8日
at 帝国ホテルカンファレンスルーム
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3種類になったミシュランガイド
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田中: |
日本版ミシュランが発売されて4か月以上も経過したのに、未だにウーダラカーダラと百家争鳴な日本って、ホント、天下太平だよね(苦笑)。実は今回の日本版はね、皆が聖典として崇め奉っているミシュランガイドとは似て非なる存在なんだよ。今まで2種類あったミシュランガイドが、“発展途上”人向けに新たに1種類が加わって3種類になったと捉えるべきだと思うの。
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浅田: |
従来からの2種類というのはグリーンガイドとレッドガイドね。
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田中: |
そうなんだ。グリーンガイドは旅行ガイドで、レッドガイドはホテルとレストランのガイド。日本でも、総合化成品メーカーのオカモトがミシュランと合弁会社を設立してタイヤ製造販売を手掛けた90年代後半に、邦訳されたグリーンガイドが出版されているんだよね。フランスやドイツ、ギリシャといった国別ガイドに加えて、プロヴァンス、ロンドンといった地域別、都市別のガイドも実業之日本社から全部で14冊。今では絶版なので、にゃんと古本屋で1万円なんて値付けだったりする。
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浅田: |
グリーンガイドは、日本の旅行ガイド本とは月とスッポンでしょ。たとえばフランスでいえば、横浜正金銀行(後の東京銀行)の支店に永井荷風が勤務したゆかりの地で、最近、最も期待される指揮者の大野和士が新たに首席指揮者に就任した国立歌劇場のあるリヨンや、EUのヨーロッパ議会の所在地で次世代超低床式路面電車LRT(ライト・レール・トランジット)を導入して市街地から自動車を排除したストラスブールといった都市はもちろん、さらにもっと小さな町でも紹介されている。
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田中: |
うん。その2つの街は食都としても名高いけど、グリーンガイドは街の見学に要する時間が各項目の最初に記されていて、訪れるべき美術館や教会が紹介されている。それぞれ短い文章の中でも、展示作品や歴史とか由来が理解できる優れもの。しかも、最初にはナショナルミュージアムみたいな存在が載っているけど、3番目や4番目には、アプライドアーツ=生活芸術の博物館、つまりロンドンで言ったらヴィクトリア&アルバート的な空間がリストアップされているわけです。日本のJTBや昭文社が出してるものは、国立美術館のような権威的存在をいくつか載せているんだけれど、その次はもうレストランとホテルになってしまって、しかも必ず写真入り。思うんだけど、フィレンツェのウフィツィ美術館でメディチ家の人々の肖像画を眺めているうちに、み〜んな同じ顔に見えてきちゃうでしょ、僕みたいな芸術の素養のない人間には(苦笑)。それよりも、当時使っていたバレエのトゥーシューズとか台所用品であるとか、生活芸術のほうが当時の時代を体感しちゃえる。まさにウィリアム・モリス的な世界であって、そういうのを一般の人は見たいのではないかと。時代を感じるためにね。歴史って必ずしも表側だけでなく、生活の部分もあるわけじゃない。グリーンガイドには、そうした哲学がある。
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浅田: |
ナポリ辺りの説明には、眺めのいい場所の紹介にすら、星がついてるからね。
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田中: |
だから、グリーンガイドの日本語版が出版された時、これで相変わらずな日本のガイドブックは駆逐されちゃうなぁ、と思ったよ。だけど、依然として安泰。逆に、グリーンガイドは無味乾燥だと勘違いされちゃった。そこに今回の写真入り東京版をミシュランが出した理由もあるんだね。ほら、著名なブティックの写真や地図も満載の日本のガイドブックには、取材担当者の小さなコラムみたいなのが必ずあって、私はこの町でスリに遭ったけど、交番を教えてくれた人のいいおじさんがいて、交番もよくやってくれて旅先で人間の温かみを知った、なんて書いてたりする。うーん、そうした情念の話は、自分のブログならともかくガイドブックには必要ないでしょうに。
本来のレッドガイドというのは、フランス版には2008年最新版で3569軒のレストランが載っているわけです。その中で3つ星は26軒。2つ星が68軒。1つ星が435軒。フランス全土で星付きレストランは529軒なの。数年前から手頃な価格で良質な料理を味わえる店をビブ・グルマンと称してミシュラン坊やの顔を付けるようになって、こちらが510軒。で、26軒の3つ星の中でパリにあるのは9軒しかない。残りは食都リヨンでも、その郊外だったり、人口数千人の町や村なのね。ストラスブールから北へ60キロのランスブールという3つ星は、人口700人のバエレンタール村の小川のほとりにある。有名なミシェル・ブラスの店も、人の数よりも牛の数が多いラギオールという人口1200人の村。ソムリエナイフでも知られるラギオールで、元々は母親が食堂をやっていて、修業した彼が継いだら評判を集めて、集落から離れた美ヶ原のような高原に宇宙船が舞い降りたような建物を造って移した。冬は大雪なので、今でも11月から3月はクローズ。それも原因で、料理がどれだけ良くても2つ星止まりだったのね。3つ星となるには料理だけじゃ駄目なの。でも、英語の判る支配人やワインも充実させて、3つ星を獲得する。建物や佇まいも重要。これはイタリア版やスペイン版の3つ星も同じ基準だよね。その意味でも東京版は、写真満載のニューヨーク版やサンフランシスコ、ロサンゼルス、ラスヴェガス版と同じレベルで、欧州版のレッドガイドとは異なるんだよ。
欧州版のレッドガイドには、スペシャリティの料理が2行くらい文章として載っているけれど、あとは定休日、車椅子でも可能かどうか、ホテルの場合は犬も同宿可能か、ブロードバンド回線が完備しているか、こうした客観事実をアイコンで示しているだけ。毎朝、魚河岸に出掛ける仕事熱心な主の姿勢に好感(爆)、なあんて高校野球的精神論の情念的な文章は1行もない。まさしく行間を読み解く洞察力が読者の側に求められているんです。だって、市場に行かなくたって、優れた仲買人との関係で素晴らしい食材が入ってくるかもしれないし、市場に毎日行ったって駄目かもしれないんだから。
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浅田: |
そそもそもタイヤ会社が作ったガイドブックだから、ドライブマップのように客観的で詳細な情報というのがベースにあって、グリーンのほうはそこに歴史的・文化的な情報も載せてあるし、レッドのほうはホテルやレストランについての客観的な情報だけを載せてある。その店のためだけに旅行に行くに値する店が3つ星だ、と。
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田中: |
そうそう。わざわざその店のために旅行に行くのが3つ星。2つ星は寄り道をしてでも行くべき店。1つ星は優れた一品料理がある店。だから3つ星となるには、料理以外の部分も必要になってくる。ソムリエがいなければならない。
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浅田: |
で、星が付いてないレストランもいっぱい載ってる。
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田中: |
そうなの。レッドガイド都市版のパリもロンドンも、全国を網羅したフランス版、イギリス版が基本としてあって、それをさらに充実させているんだもの。すべてが星付きの東京版とは、そもそも土台が違う。
ホテルに関してもアイコンで、屋根の数で大きさを示して、レストランはフォークの数で値段を示している。赤く塗ってあるのは、そのカテゴリーでも特に素晴らしいという意味。あとは建物自体は17世紀からの伝統的建造物でも、空調や什器等の設備は心地よいとモダンのMマークが付いていたり、論理的に考えられているよ。小鳥マークが付いていたら静かな店であるとか、その小鳥マークが赤く塗ってあったら、とりわけ静かな店であるとか。浅田さんが先ほども言ったように、眺めがいい場合には眺望のマーク。で、その素晴らしい景色が海か山か湖か、わかるように記してある。
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浅田: |
ぼくがいいと思うのは、大都会に集中してないこと。田中さんの好きなナポリから南に行ったアマルフィ海岸とか、バルセロナから東へ行ったコスタ・ブラーバとかだと、小さな街々に点在する観光スポットや店がきちんとリスト・アップしてあって、あれは本当に役に立つ。
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