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「すでに原型をとどめていないニンジンやくたくたの月桂樹の葉が、見る影もなくなった骨にへばりついている。これを食うやつの気がしれない」 これは本書の著者、アレックス・カプラノスが、かつてレストランの厨房で髄骨を煮込んでいた時の感想である。 著者はスコットランド出身のロック・バンド、「フランツ・フェルディナンド」のフロントマン。自らを「胃袋の冒険家」という彼が、世界中を旅した中で得た食体験を一冊の本にまとめた。 「食うことが大好き」「胃袋の冒険家」なんて言いつつ、そこはロッカー。「この食材のコラボレーションが絶妙」なんて、一言も出てこない。どちらかというと、自分に馴染みのない食品のグロテスクな部分や影の部分をおもしろおかしく語って聞かせる。本書は彼にしか語れない新しいジャンルのグルメ本なのである。 バンドのメンバーで食卓を囲み、異国の珍しい食材を前に、誰が一番先にそれを食べるか、どんな反応を見せるかを観察し合う描写はまさに、夢中になって遊ぶ子どもの姿だ。本当のグルマンとは、食を介してどれだけ楽しめるかに情熱を傾ける人のことをいうのだ。バカバカしいことを真剣にやる。それが人生を楽しく生きるたったひとつの知恵なのかもしれない。 
| 『サウンド・バイツ フランツ・フェルディナンドの世界グルメツアー』 アレックス・カプラノス著 実川元子訳 白水社刊 1890円 |
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