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富山県刊行物センターが発行している、南北を逆さにした『環日本海諸国図』(260円)という地図がある。大陸から日本を見た地図で、「逆さ地図」とも呼ばれる。この地図を見ると、九州は朝鮮半島に驚くほど近いし、かつて日本列島は中国大陸と地続きだったのだろうと、容易に想像が及ぶ。そして、日本は島国なのだとあらためて思う。 『封印の島』の舞台はギリシャ・クレタ島の東に位置するプラカと、沖合の島スピナロンガが舞台の小説。博物館に勤めるアレクシスは母の出生地であるプラカへと赴く。ふるさとの村で彼女が知らされたのは、曾祖母がハンセン病にかかり、スピナロンガ島に隔離されて生涯を終えたという事実だった。そして、残された家族も病に蝕まれていく……。宗教上の迷信やその姿から差別を受けていたにもかかわらず、島の人々は病を受け入れ、小さな菜園を作り、静かに人生を送った。そこには周囲のどの町よりも輝く、美しい楽園があった。アレクシスの封印されたルーツを解き明かしながら、第二次世界大戦を挟んだ時代を描く。家族とは身近な存在だけに、彼らの人生の歩みを理解していると思いがちだが、誰にも心に留めておきたいものがある。しかし、その心の奥を覗くことが許されるのは、強い絆で結ばれた家族だけなのかもしれない。 『約束の島、約束の祭』は沖縄・八重山諸島を舞台にした紀行本。沖縄紀行本にありがちな、おいしい食べ物やきれいなビーチはあまり登場しない。そこに描かれているのは、シャッターを押しながら、島に住む人たちの輪にゆっくりと入り込もうとする著者の姿だ。日本には魂の消えた観光客向けの祭りが山ほどあるが、八重山には島民のための祭りが数多く残っている。「よそ者」ゆえに決まりを知らず、時に怒鳴られながらも祭りの核心に慎重に近づいていく。箭内さんの素晴らしいところは、その祭りを通して島の人々をあたたかく見つめている視点だ。その視点と登場する人々の人生の堆積が、この本を「祭りの紀行本」に終わらせていない。 「逆さ地図」はグーグルアースを使えば、簡単に再現することができる。北海道、本州、九州、沖縄、八重山諸島、台湾、そしてフィリピン、インドネシア。その連続は決して遠いものではない。視点を変えて、島の連鎖を見直すと、いかに常識が視点を固定しているかを思い知る。その連鎖の先には、遠くギリシャの島々が続く。  | | | 『封印の島』 著:ヴィクトリア・ヒスロップ 訳:中村妙子 みすず書房刊 上2940円、下2730円 | | 『約束の島、約束の祭』 著:箭内博行 情報センター出版局刊 1575円 |
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