QUESTION
拝啓
ワイル先生
いつも貴重なご教示を大変感謝しております。今回先生にお伺いしたいのは、感染症に関してです。
私はインフルエンザワクチンを接種したにもかかわらず、昨年に季節性のインフルエンザにかかってしまいました。インフルエンザ感染症の患者さんをかなりの数を診察したので、防ぎきれなかったかもしれません。手洗い、うがい、マスクはきちんとしていたつもりだったのですが……。
先日、日本で、ある芸能人が肺結核に感染しました。しかしながら常にいっしょに行動をしていた仕事のパートナーには感染しなかったそうです。このように感染する人とそうでない人がいますが、そこにはどのような違いがあるのでしょうか?
人免疫不全ウィルス(HIVの原因となるウィルス)はある特定のケモカイン受容体を介してリンパ球に侵入することが知られており、その特定のレセプターを生まれつきもっていない人はHIVに抵抗力があるといわれています。このように個々人での感染症に対する抵抗力に違いがあることがわかってきており、これらの研究が最近進んでいるようです。
感染症の範囲は非常に広く、様々なことがいわれておりますが、最近の知見を含めて、先生の感染症に対するお考えをお教えいただければ幸甚です。
草々
ANSWER
関谷先生
感染と免疫の話は本当に複雑です。人が溢れている部屋に病原体をばらまいたとしても、誰が病気になるか、ならないかを予測することはできません。現状では計り知れない多くの要素が関わっているからです。実は私は、感染に影響を及ぼす生化学、感情、遺伝学、身体構造、ストレス・レベル他における全ての要素については今後も説明できないと考えています。しかも個人差があるだけでなく、同じ人であっても、こうした要素が数分以内にかなり変化することもあるのです。
それでも感染がどのようにして起こるのか、わかっていることもあります。多くの感染が、特定の感染源との接触を必要とします。たとえば、クラミジアや淋病などの性病は、性的関係をもった相手から感染します。水虫や真菌感染症は、感染した人に触れることによって、あるいはシャワー室やプールをはだしで歩くことによって感染します。男性のほうが女性よりも水虫になりやすいのは、興味深いことです。黄色ブドウ球菌は、健康な人でも肌や鼻の中によくみつかりますが、問題になることも、ならないこともあります。いつなんどきでも、人口の25~30%は鼻の中に黄色ブドウ球菌をもっていますが、症状を持っているのはその一部に過ぎません。こうした細菌は、軽い皮膚感染(吹き出物)やおできから、生命の危険さえある肺炎や髄膜炎、中毒性ショック症候群に至るまで、様々な症状を引き起こします。アメリカの約50万人の入院患者が毎年、黄色ブドウ球菌に感染します。 困ったことに、このような感染は、治療に使うペニシリン系抗生物質への耐性を強めているようなのです。最悪の感染というのは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を原因とするもので、治療法は限られてきています。
健康な免疫系を持っていれば、感染を避ける可能性を高めます。ただし、人生全般にわたって、風邪や咽頭炎、流感などの比較的軽度の感染症からも免れるとは考えにくいですが。それでも免疫系が健康であれば、通常は細菌に触れても感染しませんし、アレルゲンに接してもアレルギー反応を起こしません。そして発ガン物質があっても、ガンを発症しないのです。
免疫系の問題は、ふたつに分類できます。ひとつは活動低下であり、感染症やガンになる可能性を高めます。もうひとつは活動亢進であり、アレルギーや、狼瘡(ろうそう)や関節リウマチなどの自己免疫疾患になる可能性を高めます。
健康な免疫系を維持するためのガイドラインを次のように書いてみました。
一 感染を長引かせないようにしましょう。原因不明の熱、寝汗、リンパ節の痛みや腫れといった症状を放っておいてはいけません。どれも感染症が隠れている可能性を示しています。口腔の衛生状態を良好に保ちましょう。歯茎や歯における細菌の固まりが少しでも何らかの症状を引き起こすと、体の免疫系の働きの多くをそこで使ってしまいます。性的行為に伴う衛生にも気をつけ、体の穴をきれいに保つ必要があります。性的関係をもつ相手の数を限定し、セーフセックスを実践しましょう。
一 むやみに抗生物質を使わないようにしましょう。抗生物質は強力な薬で、使わざるを得ない状況のためにとっておく必要があります。たとえば免疫系が細菌感染を抑えられなかったり、細菌感染が心臓や肺や脳のような重要な器官に達することがあるのです。抗生物質の使い過ぎは、耐性のある、より有毒で危険な新しい細菌を生む可能性を高めることを頭に留めておきましょう。
一 免疫抑制剤を避けましょう。この薬剤は、癌の化学療法や、臓器移植を受けた患者さんの拒絶反応を抑えるためには必要です。けれどもアレルギーや自己免疫疾患、炎症を治療するために副腎皮質ホルモンやステロイドをむやみに使うことは危険だと思います。生命に危険を及ぼす深刻な問題には必要ですが、それでも短期の使用に限定されるべきではないでしょうか。2~3週間を超えるべきではありません。ステロイドはきわめて毒性が強く、依存を引き起こし、病気を治療するよりも抑圧し、自然療法による治癒の可能性を狭めます。その上、免疫を弱めてしまうのです。
一 輸血を避けましょう。ウィルス性の病気を感染させ、異種タンパクが溢れることにより、免疫系に負担をかけるかもしれません。もちろん、緊急の場合は、血液を使わないわけにはいかないかもしれません。けれども手術を受けるなら、事前に自分自身の血液の一部を採り、保存してもらいましょう(自己血輸血)。
一 放射線照射を避けましょう。免疫系の一部である胸腺は、放射線に非常に弱いのです。不要なX線検査(歯科も含む)を避けましょう。貴重な診断方法ですが、過剰に使用されています。担当医がX線を勧めるには十分な理由があることを確認しましょう。
一 有害な化学物質との接触を避けましょう。癌を引き起こし、免疫系にダメージを与えることがあります。
一 健康的な食生活を送りましょう。免疫システムを守るために、多価不飽和脂肪酸を含む植物油とそれを使った食品を避けましょう。フリーラジカルを形成しやすいため、免疫系の細胞には危険です。タンパク質を食べる量を減らしましょう。タンパク質の残留物が、免疫系を刺激するかもしれません。とくにアレルギーや自己免疫疾患の傾向がある方は、気をつけましょう。動物性食品をたくさん食べないようにしましょう。このような食品は、よく抗生物質やステロイドホルモンが残留しており、免疫を弱める場合があります。牛乳や乳製品をできるだけ摂らないようにしましょう。とくにアレルギーや自己免疫疾患の方は気をつけて下さい。牛乳のタンパク質は、免疫系を刺激する典型的な物質です。
一 免疫機能を守り、ガンのリスクを減らすために、毎日、抗酸化作用の高いサプリメントを摂りましょう。
一 滋養強壮作用のあるキノコについて学びましょう。私は免疫力を高め、抗ガン作用のある7種のキノコを抽出したサプリメント(液体)を毎日、摂っています。食べられる薬用キノコとしては、シイタケ、ヒラタケ、マイタケ、エノキがあります。他の霊芝などのキノコは硬かったり、料理に使うには苦かったりします。けれども薬用茶やエキスとしては使えます。
一 アストラガルス(オウギ)を摂りましょう。この漢方薬剤は、抗ウィルス作用があり、免疫力を高めます。風邪や流感、呼吸器系感染の予防にもお薦めです。
一 エキナセアについて学びましょう。この観賞用植物の根は抗菌作用があり、 免疫力を高める成分を含んでいます。エキナセアの根をそのまま、あるいは乾燥させ、チンキ剤やカプセル、錠剤、エキスとして買うことができます。エキナセアを風邪や流感、喉の痛みなど、抵抗力が弱っている時に利用しましょう。免疫力をつけるために、成人の服用量の半分(ラベルの指示を見て下さい)を10日間、摂りましょう。エキナセアはずっと続けて摂取すると、効力を失います。10日間摂ったら2週間お休みし、また再開しても結構です。
一 考え方や感情をもっと健康的なものにしましょう。精神神経免疫学という新しい学問では、心と神経系、免疫系の繋がりを証明しています。多くの例においてこの繋がりは化学的なレベルで起こり、ペプチドと呼ばれている小さなタンパク質の分子がメッセンジャーとして、細胞から細胞に情報を届けています。明らかに、悲しみや鬱といった感情は免疫の働きを阻害します。逆に幸福や安心感は、その働きを高めることができるのです。否定的な精神状態を止めようとしたり、闘おうとしないでください。前向きな精神状態をつくりだすことにエネルギーをかけましょう。そうすれば、否定的な気持ちは自然に解消するでしょう。
草々






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