ソトコト ロハスピープルのための快適生活マガジン

ワイル先生の手紙、関谷先生の手紙 健康への案内状

ソトコトで連載中の「健康への案内状」。web版では、誌面では掲載しきれなかった、ワイル先生の手紙の全文を公開します。

QUESTION

肺がんで亡くなる人が増えていますね。

拝啓
ワイル先生


毎度、有意義なご回答をありがとうございます。今回、お聞きしたいのは肺がんに関してです。近年、肺がんで死亡する日本人は6万人を超えました。肺がんは、これまでがん死亡の原因の1位であった胃がんを抜き、がん死因の1位となりました。しかも死亡者数は増加傾向にあります。日本において、肺がん対策は重要な課題となっています。

肺がんの治療は、初期ならば外科的療法、進行した状況では化学療法が世界的にも標準療法です。これに加えて、放射線療法を行うこともあります。最近では分子標的治療薬であるerlotinibが非小細胞肺がんに有効であると『New England Journal of Medicine』誌に報告されたり、副作用が問題となったgefitinib(日本での商品名イレッサ)なども上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子変異が認められる症例に対しては70~80%の奏功率との報告もあります。

しかしながら、肺がんは一般に進行が早く難治性であるため、現代最新医学以外の標準療法のみならず、多くの相補・代替療法を利用している人も多いと聞き及んでおります。免疫療法(免疫力を高めることで、がんを攻撃する療法)、がんワクチン療法(がん抗原を免疫細胞に覚えさせてから身体に戻す治療)、漢方治療などを利用すると聞いております。

難治性疾患である肺がんに、効果的な予防法や対処法はありますか? ご見地をお聞かせいただけましたら幸甚です。

草々
関谷 剛

ANSWER

肺がんは、アメリカでも厄介な問題です。

関谷先生


肺がんは、アメリカでも厄介な問題です。2005年の肺がんによる死者は、約16万人に上っています。アメリカのがん死亡原因第1位であり、乳がんや大腸がん、前立腺がんによる死亡数を合わせた数よりも多いのです。

アメリカの肺がん患者の約90%は、喫煙を原因としています。そしてアメリカ肺協会は、新患のうち、以前喫煙していた人たちが40~50%を占めると報告しています。喫煙者が肺がんになるリスクは、非喫煙者の10~15倍です。喫煙期間が長ければ長いほど、リスクは高くなります。禁煙を始めると、リスクは下がりますが、どの程度か、確たることはいえません。喫煙期間以外にも考慮すべき要素があります。1日に1~2箱吸っていたのか、それともたまに吸う程度だったのかなど。環境や遺伝の影響もあります。

『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』の2004年6月26日号で発表された研究では、喫煙者の寿命は、非喫煙者の寿命よりも、平均で10年短いとされています。若い時にタバコを吸い始めた人のうち、半分から3分の2の人たちが、喫煙に関連した病気で死亡します。4分の1の人たちが中年期に死亡します。また、その研究によれば、50歳で喫煙をやめるとリスクが半分に減り、30歳でやめれば、非喫煙者のリスクと同じ位になるそうです。

いったん肺がんと診断されれば、見通しは厳しいです。アメリカでは、治癒率は16%にすぎません。全患者の60%は診断を受けて1年以内、75%は2年以内に死亡します。不運にも、大半の肺がん患者は、進行してから気づくのです。ただし、この病気は、以前考えられたほど見つけにくいものではないことを示す証拠がいくつかあります。『ソラック』誌の2005年4月号に掲載された、わずか22人の患者を対象とする小規模の研究でつきとめられた症状に対し、患者や医師がもっと気をつけていれば、早い段階で病気に気づくかもしれません。

この研究結果によれば、がんの診断を受ける数か月前から、30に上るさまざまな症状が起きており、そのうちのいくつかは、何か月にも渡って持続するということです。もっとも多い症状としては、咳、呼吸の変化、胸や肋骨の痛み。それからより一般的な症状として、疲労感、無気力、体重の減少があります。研究者はまた、すべての患者が診察を受けるのに数か月も遅れたことを発見しました。それほど深刻な問題と思わず、肺がんの可能性があると考えなかったからです。

肺がんのリスクは、喫煙者の割合がもっとも高い一方、非喫煙者の場合もなることがあります。02年の『アメリカ医学協会』誌に掲載された研究によれば、空気1立方メートル当たり、細かい煤の粒子や亜硫酸ガス関連の汚染が10ミクログラム増えるごとに、心臓や肺の疾患にかかるリスクが増大するということです。肺がんのリスクも、8%ほど高まります。この論文の執筆者は、「汚染によるリスクの高さは、タバコを吸う人と同居するに等しい」と述べています。

汚染物質から守るために、家庭にHEPAフィルターを備え付けることをお薦めします。アメリカでは、各部屋用の独立型HEPAフィルターが売られています。また、家庭の換気システムにおいて、より大きな装置を業者に設置してもらうことも可能です。

一般的にがんのリスクを減らすため、私が推奨する、抗酸化サプリメントを毎日摂ることをお薦めします。ビタミンC、E、ミックスカロチン、ミネラル・セレニウム(セレン)が含まれます。これらは、体の抵抗力を高めるのに役立ちます。緑茶やしょうが、ウコンの濃縮エキスは、外界の汚染物質から守るための助けとなります。
 肺がんのリスクを減らすために、ニューチャプターが販売している「スモークシールド」という、ハーブをベースとしたデトックスのサプリメントをお勧めします。

このサプリメントは、吸い込んだ汚染物質を排出する助けとするものです。ウコン他のハーブにより、発がん性物質がもっとも毒性の高い状態に転化することを抑止し、フリーラジカルと闘う力を高める可能性があります。

肺がん以外も含め、従来のがん治療を補完するために、次の薬用キノコをお薦めします。免疫系の機能を高めることができます。

マイタケは食用となりますが、アメリカでは「森のメンドリ」として知られています。なぜなら、巣ごもりしているメンドリの尾羽に見えるからです。マイタケは抗がん作用と抗ウィルス作用があり、免疫力を高めます。

霊芝は食べるには苦すぎますが、ティーバッグやカプセル、液体エキスなど、広く活用されています。動物実験の結果、霊芝は免疫機能を改善し、悪性腫瘍の成長を抑止する効果があることがわかっています。自然な抗炎症作用もあります。

アガリクスは、ベータグルカンという多糖群を含み、免疫系を高める効果があるとされています。抗腫瘍や抗ウィルスの作用もあるという研究結果が出ています。また、血糖やコレステロールへの影響を緩和するとされます。日本とブラジルでは、腫瘍専門医が治療に使っているそうですね。

私のウェブサイトを通じて、患者さんは免疫系をサポートするサプリメントをオーダーしていただけます。それは6種の薬用キノコに加え、アストラガルス(オオギ)が入っています。キノコと化学療法の組み合わせによる影響については、あまり研究されていません。薬用キノコの有効成分からして、何らかの影響がある可能性は低いと思われます。

肺がん治療のため、アストラガルスが化学療法と併用された中国の多数の例をメタ分析した結果があります。アストラガルスのサプリメントを摂取した患者さんのほうが、化学療法のみよりも、生存率を含め、いい結果が出ました。

また、がんの化学療法や放射線治療を受けている時に抗酸化サプリメントを摂取することは論議の的となっていることを付け加えたいと思います。酸化のダメージから細胞を守るために摂取される抗酸化物質が、酸化を介してがん細胞を排除する化学療法の作用を邪魔するのではないかという恐れがあるためです。

しかしながら、健康な細胞を守るために、がんの患者さんには、抗酸化作用に富む食事や、一日に緑茶や白茶を数杯飲むことをお薦めします。

植物療法によっては、がん治療の邪魔になることがあります。たとえばセントジョンズワートは、血流における化学療法薬のレベルを下げ、治療の邪魔をするかもしれません。けれども、アストラガルスを含む多様な漢方医学は、化学療法や放射線治療と併用することで、治療効果を高め、毒性を減らすことができます。そして鍼は、化学療法や放射線治療の副作用(吐き気、疲労感、痛み、白血球数の減少など)を和らげてくれます。呼吸法やヨガ、自己催眠、イメージ誘導などのストレスリダクションは免疫系を強くし、ストレスを緩和してくれます。

草々
Andrew Weil

関谷 剛

関谷 剛 せきや・たかし
1968年東京生まれ。医学博士。東京大学医学部附属病院アレルギーリウマチ内科、同大学医学部漢方生体防御機能学、独立行政法人医薬品医療機器総合機構などに勤務。主に、アレルギー、リウマチの免疫学を研究している。

Andrew Weil アンドルー・ワイル

Andrew Weil アンドルー・ワイル
1942年アメリカ・フィラデルフィア生まれ。医学博士。アリゾナ在住。アリゾナ大学医学校・統合医療プログラム部長。西洋医学と代替医療を統合する「統合医療」の第一人者。「ナチュラル・メディスン」「ヘルシーエイジング」など著書多数。
オフィシャル・ホームページ
http://www.drweil.com/

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