ソトコト ロハスピープルのための快適生活マガジン

ワイル先生の手紙、関谷先生の手紙 健康への案内状

ソトコトで連載中の「健康への案内状」。web版では、誌面では掲載しきれなかった、ワイル先生の手紙の全文を公開します。

QUESTION

最近、不安定な血圧の人が増えているようです。

拝啓
ワイル先生


今回、お聞きしたいのは血圧についてです。私の母は、高血圧で内服治療をしていて、いたって元気です。祖母も本人は高血圧と言っていましたが、特に降圧剤は服用せずに95歳近くまで長生きしました。血圧に関しては遺伝的な要素や生活習慣的な要素が大きいようです。特に生活習慣の乱れは血圧に大きく影響することが知られています。

最近、健康診断をしていると特に若い女性を中心に血圧が低い方が多く驚きました。現代のストレス社会のせいか、はたまた自律神経を乱すような生活習慣、運動不足、無理なダイエット等が原因で血圧が不安定になるのでしょうか?

血圧による病気といえば高血圧があり、高血圧は動脈硬化の原因となり、この動脈硬化によりさまざまな虚血性疾患(心筋梗塞や脳梗塞等)になるといわれております。高血圧は患者数が多く、多くの薬物が市場に出ています。血圧の薬にはベーターブロッカー、カルシウム拮抗剤、ACE阻害剤、利尿剤などの薬に加え、近年、ARB(アンギオテンシン?受容体拮抗薬)が注目を浴びており、副作用が少なく効果が大きいということで盛んに宣伝されています。これだけ種類が増えてくると、治療する側も患者もどのように薬を使用すべきか悩んでしまうことも多いようです。

いずれにしても血圧で悩んでいる方は多いようです。こういう私も遺伝子学的に高血圧になる可能性が高いので、心配している一人です。血圧に関してよろしくご教授お願い申し上げます。

草々
関谷 剛

ANSWER

ライフスタイルをもう一度見直すべきです。

関谷先生


高血圧は、アメリカでも大きな問題です。心臓血管疾患の中でも、もっとも一般的なもので、成人の約3分の1が罹患しています。「サイレントキラー」と呼ばれるのは、重度の高血圧であっても、通常、明白な症状がなく、心臓発作や脳卒中、腎臓病のリスクを増大させるからです。

幸いなことは高血圧は見つけやすく、健康なライフスタイルに変えることで、血圧を下げ、コントロールし続けることが可能です(ただし、2007年に発表されたアメリカ疾病予防管理センターの大規模な研究では、高血圧と診断された人の大半は、血圧を下げるために、少なくとも何かひとつは実行していたものの、30%の人しか効果が出ていないことを示していました)。

高血圧の家系であれば、血圧をコントロールするために薬物が必要となるでしょう。ただし、薬物のみに頼るべきではありません。血圧を安全圏に留めるために、リラクセーションを含む、血圧を下げるための健康法を取り入れたライフスタイルも重要です。

血圧は、血液が動脈壁を押す力を数字で表したものです。高血圧は140/90mmHg(水銀柱ミリメートル)以上と定義されています。

収縮期血圧(最初の数字)は、心臓が収縮する際の動脈の圧力を測ります。拡張期血圧(2番目の数字)は、心臓が鼓動の間で休んでいて、血液をためている際の動脈の圧力を測ったものです。

正常血圧は、上が120~129、下が80~84、至適血圧(正常値よりも理想的な値)は上が120、下が80未満です。高血圧は、心臓をもっと働かせることで、酸素がより多く必要となり、狭心症の原因となります。

血管への影響により、高血圧は心臓発作、脳卒中、腎臓病のリスクを高めます。さらに、「正常高値血圧」(上が130~139、下が85~89)も、こうした疾患のリスクを高めるという研究結果が出ています。

加齢によって動脈壁が弾性を失うと、血圧が上昇します。動脈を流れる血液の圧力が高まるのです。大半の場合は、「本態性高血圧」とされ、医師は高血圧の正確な原因を決定できませんが、次のような特定の要素がリスクを高めることを知っています。

●ストレス
高血圧は交感神経の亢進で起こり、動脈の筋肉壁を収縮させます。

●塩分の摂り過ぎ
塩の中のナトリウムは、過剰な水分をためこみ、血液容量を増やし、血圧を上昇させます。食塩感受性が高い人(食塩摂取で血圧が上がりやすい人)や高血圧の家系の人は、食塩摂取量を1日あたり約小さじ2分の1杯(およそ2.4g)に制限するとよいでしょう。

●カフェイン
心臓血管を刺激します。コーヒーやお茶、チョコレート、一部の薬剤に入っているカフェインは、血圧を上げます。

●カルシウム、マグネシウム、カリウムの不足
全身の筋緊張を和らげる助けとなるこれらミネラルを十分供給しない食事は、血圧の上昇につながります。

●インスリン耐性
インスリンは、血糖(ブドウ糖)を燃料として使うために、血流から体中の細胞に運ぶことを促進するホルモンです。インスリン耐性があると、分泌されたインスリンの通常量では、ブドウ糖を細胞に運ぶために十分ではありません。したがって、細胞がインスリンの働きに「抵抗する」といわれています。それを埋め合わせるために、すい臓がインスリンを分泌し続けます。十分な血糖を細胞に運び続け、血糖値を保とうとするのです。インスリン抵抗が起きると、腎臓がナトリウムを蓄え、高血圧につながります。

●アルコールの定期的摂取
体がアルコールを代謝すると、血圧が高くなります。

●肥満
心臓は、脂肪組織に血液を供給するために一生懸命働きます。余分な1kgを落とすだけでも、血圧を改善できます。

●薬物
ステロイドや避妊薬、充血除去薬、非ステロイド性抗炎症薬、肥満治療薬など、処方薬によっては、一部の市販薬と同様、血圧を上昇させます。また、カンゾウ根や麻黄、ガラナ、コーラ・ナッツ、マテ茶、チョウセンニンジン、ヨヒンベを含む薬草療法も血圧を上げる可能性があります。

高血圧のリスク因子を考慮すると、カフェインやアルコール摂取の制限などの対応が明らかに必要です。私は、次のことをお薦めします。

●加工食品を避けましょう
アメリカ人の食生活では、加工食品がナトリウムの主な摂取源となっています。

●タバコを吸わないようにしましょう
喫煙は、すべての心血管疾患および多くの命に関わる病気の原因となります。

●運動しましょう
ウォーキングなど、1日に最低30分の適度な運動を行いましょう。それは高血圧に対する、もっとも効果的な自然療法のひとつです。

●薬をチェックしましょう
あなたが飲んでいる薬が血圧にどのような影響を与えるか、医師と話し合いましょう。

さらに、血圧コントロールのためにリラックスすることを学ぶことがいかに重要であるかを強調しておきたいと思います。瞑想、ヨーガ、呼吸法、バイオフィードバックはすべて、効果的なリラクセーション法です。残念ながら、アメリカの医師は、血管をコントロールする不随意神経系を弛緩する価値を十分訴えていないことが多いのです。

食事に関しては、よりヘルシーな内容に変えたり、いくつかの栄養補助食品を摂ることが血圧コントロールの助けとなります。アメリカ国立衛生研究所の国立心肺血液研究所で研究者によって開発されたDASHダイエットは、血圧に影響する食物を特定した大規模な研究に基づいています。この研究については、下記のサイトで読むことができます。
http://www.nhlbi.nih.gov/health/public/heart/hbp/dash/new_dash.pdf

DASHダイエットというのは、比較的脂肪が少なく、多くのフルーツや野菜、適切なカルシウムを提供する低脂肪や無脂肪の乳製品を食べることに重点を置いています。

DASH研究者は、カリウムやカルシウム、マグネシウムが多く、ナトリウムが少ない(1日あたり2.4g以下)食事が、高血圧治療において重要な役割を果たすこと明らかにしています。

また、次のように食事の内容を変えることをお薦めします。

●動物性たんぱく質を1日あたり168gに制限してください
低脂肪のタンパク源を重視してください。

●にんにくを使いましょう
血圧を下げるのに適度な効果があり、血管が弛緩するのを助けるでしょう。

●1週間に、ナッツや種、乾燥豆を4~5皿食べましょう
ナッツや種を大さじ8~10杯、もしくは調理した乾燥豆2~2.5カップです。

●1週間に少なくとも336gの魚を食べてください
天然の寒流系のサケやイワシを中心にとりましょう。オメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。 オメガ3が多く含まれた食物を十分に得ることができないなら、魚油のサプリメントを摂ってください。

●カルシウムとマグネシウムを摂ってください
これらのミネラルを十分に摂らないと、高血圧になりやすいです。女性は、あらゆる摂取源からカルシウムを1日当たり1000~1200mg摂るよう、努力すべきです、男性の場合は、すべての摂取源から毎日500~600mgを目指せばいいでしょう。

●ビタミンCを摂りましょう
この抗酸化作用をもつサプリメントは、弱~中程度の高血圧の方が、血圧を下げるのを助けることができます。

草々
Andrew Weil

関谷 剛

関谷 剛 せきや・たかし
1968年東京生まれ。医学博士。東京大学医学部附属病院アレルギーリウマチ内科、同大学医学部漢方生体防御機能学、独立行政法人医薬品医療機器総合機構などに勤務。主に、アレルギー、リウマチの免疫学を研究している。

Andrew Weil アンドルー・ワイル

Andrew Weil アンドルー・ワイル
1942年アメリカ・フィラデルフィア生まれ。医学博士。アリゾナ在住。アリゾナ大学医学校・統合医療プログラム部長。西洋医学と代替医療を統合する「統合医療」の第一人者。「ナチュラル・メディスン」「ヘルシーエイジング」など著書多数。
オフィシャル・ホームページ
http://www.drweil.com/

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