ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

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GOMA&The Jungle RHYTHM Section
オーストラリア ― その地へ帰り、得た思い。 photograph : Shiko Watanabe, Wataru Umeda text : Yuko Asanuma

ディジュリドゥーの本場、オーストラリアでレコーディングされたニューアルバム、「AFRO SAND」を完成させたばかりのGOMA & The Jungle RHYTHM Section。日本を代表するディジュリドゥ奏者であり、バンドのリーダーでもあるGOMAが、「転機になった」オーストラリア体験について話をしてくれた。
「podcast collection」では、『ソトコト』2009年10月号掲載インタビューのロングバージョンをお届けする。『ソトコト』のために用意してくれたエクスクルーシブ音源も2曲オンエア!

10年ぶりのオーストラリア。
時の流れと、社会の変容。


photograph by Wataru Umeda

ソトコト: 今回は、オーストラリアでレコーディングをされ、非常に意義のある体験となったそうですね。なぜオーストラリアで行ったんですか?

GOMA: 前々からずーっと、オーストラリアでレコーディングをしたいという想いはあったんです。でも、バンドメンバーのスケジュールが合わなかったり予算の関係もあって、なかなか実現できなかった。それが今回、2月に行ったオーストラリアツアーのタイミングで調整できたんです。

オーストラリアを訪れるのは何年ぶりだったんですか?

長期で行ったのは1998年以来。もう10年以上も前。だいぶ変わっていましたよ。アボリジニの居住区は、すごく開発されていたし。今はみんな政府から与えられた家で、テレビやDVDがあって、携帯電話を持っている人もいて。すっかり生活が変わっていたことに衝撃を受けました。以前、お世話になった家族にも会いに行ったんだけど、彼らも変わっていましたね。彼らにとって何がよくて何が悪いかは、この先20年、30年と様子を見ていかないと分からないことだけど、伝統文化が今後どうなっていくのかは少し心配。

ディジュリドゥの人気、存在感はどうでしたか? そこに変化はなかった?

ディジュリドゥは、逆に大きなビジネスになっているようでしたね。それまでは、みんな国から支給されるお金で暮らしていたけど、ディジュリドゥを“作ったら売れる”ということが分かって、木がどんどん切られていっているようです。それは問題になっていた。生産しすぎ。 僕が最初に行った頃は白豪主義が全盛だったけれど、今は国としてもアボリジニの文化も観光資源として生かしていく方針になっている。その間にディジュリドゥの値段は10倍になりましたよ!

ジャパンオリジナル。
ディジュリドゥの先にある音。


photograph by Wataru Umeda

ツアーで回られたのはどういうところでした?

DVDに収録されているような、フェスティバルみたいな場が多かったかな。

映像を見るとすごい盛り上がりです。本場とはいえ、オーストラリアの人たちにとってもGOMAさんのようなパフォーマンスは新鮮だったのでは?

かなりジャパンオリジナルやからね(笑)。今回初めてバンドで行ったんだけど、本場の国で、自分のやっていることがどう受け止められるかは正直不安だった。ブーイングされるかもしれないという恐さもあったけど、実際やってみたら全然大丈夫だった。今回のライブは本当に勝負で。ここ最近、やりつくした感があって、少し煮詰まっている感じもあって。

映像でも、オーストラリアでのライブの成功が『ひとつの転機になった』とコメントしていらっしゃいました。

うん、転機になった。やっぱり、ずっと自分のやっていることが本場でどのくらい受け入れられるのかってことは意識していたから。


photograph by Wataru Umeda

GOMAさんの場合、単に伝統的な演奏をしているのとは違いますからね。完全にオリジナルな音楽に昇華している。

かといって日本発祥のカルチャーではないでしょ。だから、そこで引け目を感じていた部分もあって。そのコンプレックスを克服するためには、本場で自分の作り上げたものをちゃんと見せなければいけないと思っていたんです。
今回、何か所かでやってみて本場でも通用するってことが分かって、その劣等感みたいなものを乗り越えることが出来た。それが、自分にとって本当に大きな自信に繋がりましたね。

終わりなき変化。
それを受け入れ、開けた世界。

新しいアルバムのタイトルは『AFRO SAND』で、アフロビートを取り入れていますね?

レコーディング前に、アフロビートをよく聴いていたこともあって。アフロビートから派生している音楽ってすごく多いですよね? そのことに気づいて、自分たちなりに構築し直しました。それをオーストラリアに持っていって、向こうのヴァイブスも加わって出来た作品。

聴いた印象、前作に増して力強くなったというか、たくましくなった感じ。ディジュリドゥもアフリカのリズムも、いわば原始的なエネルギーのあるものだから、そこが共鳴しているような感じですね。

トライバルな音楽って、みんな繋がっているんです。大地とか、人間の本質的な部分で繋がっている。人を覚醒させる、踊らせる、嫌なことを発散させて次に繋げていく、明日への活力にする、そういう部分が同じだと思うんですよ。

自然の力強さが現れた作品という感じがしました。

ずっと想い描いていたビジョンなんです。これをクリアできたことで、次への制作意欲が湧いてきましたね。頭の中に、次のことを考えるスペースが出来た感じ。

それは?

今まではオーストラリアとか海外で受けた影響を、自分というフィルターを通して日本に伝えるということをやってきたん。それなら、次は日本から世界に向けて発信していきたい。日本は、『輸入』は十分やってきたと思うから、今度は『輸出』する番かな、と。

今までも発信していたように見えましたが。

確かにオーストラリアの人たちにはたくさんのことを教わったし、勇気をもらったし、とてもリスペクトはしているけど、その上で勝負したいという気持ちはずっとある。常にチャレンジを続けていたい。一時はどうしたらいいのか分からなくなったこともあって。オーストラリアで賞もらった直後とか、今考えるとちょっと守りに入っていたかもしれない。そう思える時期もあったけど、やっぱりその後ずっと続けてきて、チャレンジし続けないといけないと思うようになった。
常に全部変化していること、それが自然。自分もそのまま流れに乗っていけばいいかな、と思うようになった。変化に対する恐怖もあるけれど、人間ってそういう生き物なんだと受け入れられるようになってきた。僕がすごくいいと思ったものでも、他の人には全然分かってもらえないこともある。文化の違いもあるし。それも当たり前のことなんだって、徐々にそういう考えになってきました。

取材は、GOMAのホームグラウンド・多摩川にある川辺の町で行われた。河原に腰を下ろし、スニーカーを脱ぎ、ディジュリドゥをかまえる。そして、ひとたび息を吹き込むや、辺りは多摩川河川敷とは思えない空気に包まれる。あまりにも自然な一連の動き。GOMAが環境と対話をする瞬間。ここは、彼が無になる空間。次への一歩も、すべてここから始まる。

【2009年9月5日アップ記事・再掲載】

photograph : Shiko Watanabe, Wataru Umeda text : Yuko Asanuma

<収録トラック>

  • 多摩川pt7 / GOMA ~ Tama Puzzle / GOMA
[プロフィール]

GOMA●ディジュリドゥ奏者。アーティスト。1994年、ディジュリドゥに出合い独学で学ぶ。97年に、渡豪。98年には、アボリジニの聖地オーストラリア・アーネムランドで行なわれた「アーネムランド・バルンガ・ディジュリドゥ・コンペティション」で準優勝。ノンアボリナルプレイヤーとして初受賞を果たした。現在は、ソロ名義のほかに、GOMA & The Jungle RHYTHM Section、NIGHT JUNGLEなどのバンドでも活躍。首都高で交通事故に巻き込まれ活動を一時休止。8月24日から開催される個展を機に、活動を再開する。
http://gomaweb.net/

GOMA & The Jungle RHYTHM Section Official Web
http://gjrs.jp/

[インフォメーション]

初の個展が開催!

「Goma 記憶展」

会 期: 8月24日(火)~8月29日(日)
会 場: PLSMIS
    (東京都港区南青山4-17-4 1F、http://plsmis.com/
時 間: 13:00~21:00
入場料: 無料

▼DVD上映会&アコースティックライブ開催決定!

日 時: 8月27日(金)、18:00開場・19:00開演
     8月28日(土)、18:00開場・19:00開演
料 金: 3000円

問い合わせ:mail@gomaweb.net
http://ww.gomaweb.net

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