木の家マイスターが語る これからの家、パッシブの魅力

木一本が造りだす自然の気持ち良さを、近隣にもおすそわけ

 木陰の気持ち良さは誰もが知っていますよね。だから私たちが造る家も同様に、家は木の下にあるべき、と考えています。だから“木”がないと完成ではないといえるかもしれません。家の周りに広葉樹を植えればブラインドの役目を果たし、日射遮蔽も行います。しかもアスファルトで熱くなった空気を冷やしてもくれる。冬に葉が落ちれば、日差しを遮ることなく、室内に太陽の暖かさを届けます。木は一本でも外の環境を整えて室内に届けてくれる。パッシブハウスが主役なら、木は欠かすことができない名脇役です。

 古い街では庭の大木が道路にはみ出している光景も多く見かけます。こうした木は道行く人に木陰の気持ち良さを“おすそわけ”しているんですね。地域の方々に、こういう形で自然の快適を提供できるのも、パッシブの魅力ではないでしょうか。

 また、自然の力を借りて過ごす技術が採用されている家は、エネルギー問題にも強さを発揮します。震災後はこれまで以上に、パッシブを深く考え、家造りに活かすべきだと考えています。

埼玉県さいたま市
オーガニック・スタジオ株式会社 代表取締役社長
三牧省吾
「物件依頼を受けたら、まず見るのは周囲の環境」と三牧さん。そこから敷地内に植える木と家、間取りの最適なバランスを見るのだという。周囲に溶け込み、十数年たっても不自然ではない家造りを目指している。自然に溶け込む家造りに不可欠なのが木と考えている。「幸い、弊社は埼玉県をベースにしているので、植樹できる環境にあるんです。木の種類は街並みに合うものを選んでいます」。
http://www.minorinomorinoie.com/

自然エネルギーを効果的に使うほど、地球に優しい家になる

 パッシブハウスなら省エネ性能も高く、CO2排出量は少なく、地球環境にも優しい。でもこの効果は住まい手だけが享受しているものではなく、地球上の人たちとシェアしているんじゃないかと感じているんです。太陽と風は世界中の人に平等に与えられています。これを活かすことは、限りあるエネルギーを未来とも分け合うことができるわけです。これこそ、パッシブの素晴らしさだと思います。

 残念ながら都会では限られた季節や時間でしか太陽や風の効果が得られないときもある。だからこそ、住まう人には家の性能を最大限に引き出してもらうように暮らしてもらいたい。そのため実験的に温湿度データロガーを設置しています。これは定期的に温度、湿度を計測するもの。収集したデータは分析して、どう暮らせばより快適か、住まい手が気付かないことをサポートしようと考えたんです。パッシブハウスの快適性は住んだことのない人にはわかりません。だからこそ、暮らし上手になってもらえるように手を貸すのも、エネルギーのシェアではないかと思っています。

東京都文京区
株式会社参創ハウテック 代表取締役社長
清水康弘
「都会だからパッシブも限定的に使用せざるを得ない場合がある。それでも可能性を追求して、パッシブになるように努力すべき。その一歩が未来のパッシブハウスをもっとよくするものと思っています」と清水さん。同社では“いい家をつくり、きちんと手入れし、長く使う”ために、専属の“家守り”を置き、継続して家のメンテナンスを行っている。こうした取り組みも快適を生む理由なのだろう。
http://www.juutaku.co.jp/

海、山に囲まれた湘南エリアだからこそ自然との共存は不可欠

 弊社のある逗子の街には、海と山、そして豊かな緑があります。古くから自然を大切にしてきたエリアなんです。そのため、海からの風や太陽光をたっぷり取り込めるよう窓数は多く、庇は長めに設え、庭に広葉樹が植えられているのが伝統的なスタイルです。ですから私たちもごく自然に、パッシブの考え方に共感していたし、家を造ってきました。とくに住宅を手掛けるときは、ロケーションに溶け込むよう、植樹は積極的に行っています。木があるだけでブラインド効果に加えて、室内の空気は清浄されるし、温度や湿度も変わりますからね。

 10年ほど前、22戸の住宅地を開発したことがありました。ここにもたっぷりと木を植えましたが、育つにつれて木の良さが発揮されていましてね、いまではここ一帯に足を踏み込むだけで涼しさが感じられ、居住者はエアコンいらずなんだそうです。一戸の家のパッシブだけでなく、住宅地全体で考えるとさらに大きな効果が生まれる。住空間から周囲環境へと広がりを持てることが、パッシブの魅力といえるかもしれません。

神奈川県逗子市
株式会社キリガヤスタイル 代表取締役社長
畑木明雄
エコロジーへの配慮、自然素材の使用、健康な住宅を造る。これらは13年前の創立当初から続くコンセプトだ。加えて新築物件の庭には、必ずシンボルツリーを植えているそうで、いまでは160本の木が庭先で育ち続けている。また育てる楽しみも味わってもらいたいと「植栽や花の勉強会も積極的に行っています」と畑木さん。借景を楽しむ立場から、“貸”景できる家に。パッシブの新しい効果である。
www.kirigayastyle.co.jp/

快適のレベルは住まう人に合わせてオーダーメイド

 野池先生の主宰する勉強会で自立循環型住宅を学びまして、以来10年以上にわたり、“地震に強いこと+エコロジー”をコンセプトにしてきました。ただ自然の力をうまく利用するには、暑さや寒さ、日差しや風などの自然現象のどの点に快適性を置くのか、住まう方の感覚は千差万別です。その感覚を造り手が共有していれば、もっと住まい手仕様のパッシブが創出できると考えていますし、それが魅力ではないかと思いますね。

 そのため施主様との打ち合わせはなるべくお宅に伺うようにしているんですよ。真夏でもエアコンなしで過ごす人もいれば、冷やし過ぎの人もいます。そうしたところから、その家族にあった快適なポイントを探るようにしているんです。

 逆にどんな素晴らしい家を提供したとしても、それを活かすのは住まい手です。パッシブハウスに住んでいても、機械を使い力ずくで環境を整える人もいます。やはり住む方が賢く家を使いこなしてくれれば、よりよいパッシブハウスになると思うんです。お互いの知恵や努力があってこそのパッシブなのではないでしょうか。

静岡県富士市
株式会社建築工房わたなべ 代表取締役社長
渡邉泰敏
“温故創新”をモットーに、かしこい家づくりを目指す。「近年、パッシブに対して積極的な理解が増えたように思います」と渡邉さん。「手を掛けることが好きなお宅では、壁にすだれ用のフックを用意したり、逆の場合は電動シェードを装備したり。住まう人に沿うように考えています」。同社ではできるだけ地産地消を心がけていると語り、床や壁に使用する材料は静岡県の建材を選んでいるそうだ。
http://www.kentiku-koubou.co.jp/

要は断熱性能。自然素材の断熱材を採用しています

 最低限の熱源で効率よく家の暖冷房を行うにはどうすればいいのか、14年ほど前から考えていました。試行錯誤の上でたどり着いたのが断熱性能を向上させることでした。太陽と風を効果的に使うことも、設計に取り入れますが、いいプランをさらにいいものに仕上げてくれるのが断熱材だと考えているんです。その結果、お客様のなかには、昨年の猛暑でもエアコンを一度も使わずに過ごした方も多く、そういうお話を伺うと嬉しくなりますね。最近では、エアコンを設置しないという選択をされた方もいらっしゃいます。

 奈良は暑くて寒い土地柄なんですね。だから冷暖房機器は欠かせないと、多くの人が思っています。でもパッシブならそんなことはありません。家の裏手に室外機が何台も並び、熱風を吹き出す様は美しくないでしょう。外側もすっきりとした建ち姿になるのもパッシブの良さかもしれません。

 私は構造と断熱には、製造中の排出CO2の少ない自然素材しか使用しません。ですから断熱材もセルロースファイバーを使っています。燃えづらく、有毒ガスも出ず、虫よけにもなる。自然には素晴らしい材料があるんです。

奈良県橿原市
株式会社エーティーエム建築 代表取締役社長
笹川晋也
「奈良の冬は寒いんですね。でも弊社で建てた家は、外気温がマイナス2℃でも室内は16℃をキープしていました。まったくエネルギーを使わずに、現代人に合う快適な住まいを造ることは難しい。でも限りなく省エネ性能を上げることはできると思っています」と笹川さん。同社が手掛けるのは高性能な注文住宅だが、廉価な点も魅力のひとつ。環境とお財布に優しい家を造り続けている。
http://www.atm-home.co.jp/

新宿御苑に登場した「チャレンジ25ハウス」。1階南側と2階北側には大型の開口部を、またそれぞれ開口部の上には小型の窓を備えている。熱い空気は天井に溜まるものだが、2階南側から入った空気は、天井をなめるようにして熱い空気を取り去り、北側の小型窓から排出するように設計される。
大きな窓があるから風の通りがいいのではなく、最適な場所に、最適なサイズの窓が設えてあるからこそ、家中をまんべんなく風が回るようになっている。
太陽や風とうまくつきあう住まい。それがSOWE Designなのだ。

1%の工務店を探そう

太陽や風といった自然エネルギーを効果的に使ったパッシブハウスとはどんなものなのだろう。四季を通じて快適な暮らしを実現するには? 断熱性能とは? 家が完成するまでの多くの“?”に正確に答えられる知識を持ち、そして地域に永くしっかりと根付いて、地域の気候や風土特性に合わせた特別な一棟を建てられる工務店が“1%の工務店”である。 建築技術は見えないところで進化しているものだ。実はあまたの工務店のなかでも勉強し、研鑽を重ね、建築技術に変えている人々がいるところこそ、選ばれし1%の工務店なのだ。1%、つまり稀有な存在といえよう。 いい家を造ることは自分のためだけのことではない。子どものためにも、いいものを見極める目を養ってもらいたい。快適を科学で明らかにできる実力ある工務店を探そう。

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