これからの日本の木の家は、こんなふうに造りたい。 5つのキーワード

快適な家。環境負荷の少ない家。地震に強い家。3つを両立する木造住宅をどう造るのか。自然を活かす古来の知恵を反映する、新しい技術を用いてリスクを検証し、設計に活かす……。造る人と住む人が、よりよい家を一緒に建てるために考えてほしいこと。

Keyword 「パッシブ=自立循環型という発想」 まず、ありのまま自然を受け入れる。

 自然の力を最大限利用し、自然との共生を目指す考え方。住宅においては、気温、湿度、風の強さや向きなどの自然環境を「パッシブ=受動的」に受け取り、そのチカラを活かして、より快適で環境負荷の少ない暮らしを実現することを目指す。

 パッシブの概念がもっとも浸透しているのはドイツといわれるが、一般的に、欧州の寒冷地におけるパッシブハウスは、高性能断熱材などを用いて建物を高断熱高気密化することにより冷暖房負荷を軽減して省エネ性能を高める。一方、地域によって風土が大きく異なる日本では、それぞれの環境に合わせた住宅の性能を見極める必要があり、必ずしも欧州型パッシブハウスの方法論は当てはまらない。

 また、もともと日本には、自然環境をコントロールしようという発想ではなく、前提として受け入れ、その中で見出した創意工夫を受け継いできた歴史がある。たとえば開口部を大きくして明るさを得る、吹き抜けを作って風を通す、庇を長くして日射を遮断する、といった古来の工夫は、現代の住宅においても無理なく環境負荷を抑えるための合理的な方法である。古くからの知恵を積極的に採り入れ、より自立的な循環型住宅を実現するのが日本のパッシブハウスである。

Keyword 「しなやかな強さ・レジリアンス」 今、必要とされる本当の強さとは?

 家は親から子へ引き継ぐもの、町はそこに暮らす人たちが自らつくり、守るものという理想の地域社会を構築していくには、短期的な効率ではなく、長い時間軸の中で家造りを考える必要がある。

 パッシブハウスの考え方では、多様な自然環境を受け入れ、そのチカラを活かすことで、効率優先では得られないゆとりや快適性などが生まれることを期待する。たとえば自然の風を活かす知恵を採り入れることで、エアコンの風では得られない気持ち好さを感じる家を造ることができる。

 また、リスクに対する対処能力を高めるために、冗長性(リダンダンシー)を明確に保持しておくことも重要だ。たとえば、木造住宅は燃えやすいとはいえ、いったいどれくらいの火力でどれくらい燃えるとどうなるのか、シミュレーションしておくことは可能である。そのデータを参照すれば、万が一の事態でも被害を最小限に抑えるための設計を考えられる。

 これからの日本の家には、こうした「ゆとり」や「対処能力」のような「しなやかな強さ・レジリアンス」を求めるべきだろう。家が社会を支える存在になっていくには、造る人も住む人も、まずは20年後の暮らしを想像できる時間軸の設定をしてほしい。

Keyword 「SOWE Design」 快適な日本の家を、新しくデザインする。

 吉田兼好の『徒然草』に「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と日本の木の家には、昔から、夏を快適に過ごすためのパッシブな知恵がさまざまに施されていた。一方、冬の過ごし方はというと、昔はこたつと火鉢とシンプルであった。しかし、今は夏はエアコン、冬もエアコンや電気暖房機を使う。閉め切った室内での電気による快適さが一般的になり、エネルギーをたくさん消費してしまう。

 現代において自然を活かし切り、四季を通じて快適な家を造るには、古来の知恵だけでも、新しい技術だけでも難しい。たとえば、夏に北側の窓から流れ込む涼風は、エアコンから吹き出す冷気とは冷たさの質が異なり、自然で気持ちいい。しかし、窓の位置や大きさなどに配慮がなければ風は室内を流れず、始終窓を閉め切ってエアコンに頼る生活になれば、自然の風の気持ち好さを忘れがちになる。あるいは、冬の暖房効率だけを考えて窓の小さな家を造ってしまったら、晴れた冬の日差しの温もりに気づかぬままかもしれない。

 現代では、自然のエネルギーを利用できる家の配置や、自然の風や光を家に取り入れられる方法、室内に取り入れた風や光を間仕切りなどで遮らないことを、設計段階から考慮しなければならない。
必要なのは、自然を活かすパッシブな知恵を徹底的に分析・検証し、現代の家に反映する新しい技術である。昔からの知恵と現代の技術とを統合し、懐かしく、かつ未来をみすえた気持ちのいい家を造る新しいデザイン。これがNCNが考えるSOWE Designである。

Keyword 「家守=棟梁・工務店」 頼れる棟梁を育て、家を、町を、育む。

 土地の風土に合った懐かしい未来をつくるパッシブハウスの考え方は、もともと地域密着型産業である工務店のあり方に合致したコンセプトである。家は、昔から地元の大工さんが造ってくれるもの。工場で造れるものではないので、実は今でもそれは変わらない。仮にある工務店が年間10棟の家を建てるとすると、3代で100年続けば計1000棟になり、それはもう町一つの規模である。その工務店の棟梁が地元にしっかり根を張る覚悟があれば、家のメンテナンスをはじめ、町をつくり、守ることが彼の仕事になると言っていい。つまり、棟梁が「家守」になるのである。

 ただ、現代の棟梁がこの役割を担うには準備が必要。地元の人々と信頼関係を築くには、その土地の自然や景観に配慮した家づくりはもちろん、多様な生活スタイルを持つ人々のニーズに応えられるだけの知識と技術が求められる。でも、最新の技術では、たとえばその土地の風向きや太陽の角度、年間の冷暖房負荷などをシミュレーションして設計に活かすことも可能である。家守の仕事は、そもそも地元をよく知る棟梁にこそ向いている。今や、彼らが自ら科学的に安全や安心を数値化して提示し、理想のパッシブハウスを建てられる時代になったのだ。

Keyword 「構造計算」 木造住宅の強さをコントロールする。

 阪神淡路大震災後の復興を契機にNCNが開発した木造建築の構法。ただ強い家というだけでなく、家の強度を計画的にコントロールするための技術で、木の温かみと鉄骨の強さを両立させた。

 家はなぜ地震で壊れたのか、地震で壊れない家はどう造るのか。技術開発にあたっては、建物のディテールひとつひとつについて実験と検証を繰り返し、「計画的な強さ」をつくるための根拠となるデータを蓄積していったのだという。

 SE構法では、まず、あらかじめ立地や気象条件に合わせて立体解析による構造計算を行い、そのデータを基に設計。強度の高い集成材を使うので、従来の木造住宅では不可能だった大きな窓や、壁の少ない大空間を実現できる。つまり、より自由度の高い開放的な間取りが可能なので、家族のライフステージに合わせた間取りの変更にも柔軟に対応できるのだ。家族みんなの暮らしを20年、30年あるいはそれ以上の時間軸で考えるには、家もその間の変化に応じられる設計でなくてはならない。

 NCNは、全国約500社の工務店や設計事務所とネットワークを組み、各社とこの技術を共有して、構造計算を基にした新しい木造住宅を永遠に供給し続けていくための環境整備に取り組んでいる。

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