佐々木真一のグリーンデザイン

「ウッドベルをつくろう」

「コロコロ、コロン、カラカラカラン……」
風に揺れ、ぶつかりあった無垢の木片が鳴らすウッドベル。
その音はちょっと不思議な音色だ。目を閉じて聴くと、
森のなかを吹き抜けていく風のリズムのようにも感じられる……
子どもたちと一緒に、木の風鈴をつくってみました。

ウッドベルの音色

 8月の最後の土曜日、文京区茗荷谷近くにショールームを持つ参創ハウテックが主催する、親子を対象とした木工教室「ウッドベル(木の風鈴)づくり」が行われた。同社は重量木骨による長期優良住宅や自然の力を上手に活かすパッシブハウスなどの家づくりを主に手がける工務店。参加した親子4組は、同社の施主さんや家づくりを計画中のお客さんたちで、毎年夏休みの時期に「モノづくり」の楽しさを体感する木工教室を開催している。

 今年のモノづくりは「ウッドベル」。これは、グリーンデザイナーの佐々木真一さんが考案したもので、木片を素材とした木の風鈴。手ごろな木片と紐さえあれば誰でも簡単につくることができる。最初の作品は、今年の5月に新宿御苑で開催されたチャレンジ25ハウス用にしつらえられたもの(第6回ロハスデザイン大賞・新宿御苑展)で、かなり大きめなものだったが、今回は子どもたち向けの木工教室なので、サイズを小さくした木工キットにしてくれた。

 「ウッドベルの材料は、木片と紐だけ。飾り用のビーズは好きな色を選んで、自由につくってみてください」。ひとつの木の台座に、10本の木片を紐で結んでいく。飾りのビーズをその間に結ぶ。佐々木さんの合図と共に、子どもたちは一斉に材料を手につくりはじめるが、どうやらまだ紐の結び方を覚え始めたばかりなのか、悪戦苦闘、うまく結べない。それでも、お父さんやお母さんに手伝ってもらいながら、一本ずつ木片が結ばれていくと、徐々に子どもたちの表情にも笑顔が。

 「普段あまり子どもと一緒にモノをつくったりする時間がないので、親の私としても楽しいですね」。「子どもと一緒に夢中になってしまいました」等々、参加した親御さんたちにとっても楽しい時間が過ぎていく。やがて全員のウッドベルが完成。

 「このウッドベルは、金属やガラスを素材とした風鈴と違って、とても優しい音がします。それは木という素材が持っている音色。金属的な響きではなくて、木と木がぶつかりあって鳴る音色なんですね。だから、うるさく感じない。これはウッドベルに限らず、木という素材が持つ優しさでもあると思います」と佐々木さん。「コロコロコロ、カラカラカラ、コロン、カラン」というウッドベルの音色は、耳を優しくくすぐる心地よさがある。

 「それから。このウッドベルは、扇風機のような風では音は鳴らないんです」。出来上がったウッドベルのひとつに、スタジオ内に設置されていた扇風機の風をあててみる。扇風機の風は、ウッドベル自体を押してはいるが、音を鳴らしてはくれない。

 「一定の方向から、一定の強さで吹く風では、ウッドベルの10本の木片を均等に押すだけなので、それぞれがぶつからないんですね。そもそも扇風機のような風は、自然界に存在しない風なんです。森や山のなかを吹き抜ける風は、方向も強さも不規則です。風というのは“空気の揺らぎ”なんです。だからこのウッドベルが心地よい音を鳴らしてくれるのは、そこに風の揺らぎ、風が対流しているとき。ベランダでもいいけど、家のなかでも、風の入り口と出口をみつけて、風の通り道になっているところに飾るといいですよ」。

 そんな佐々木さんの言葉を確かめよう、ということで、完成したウッドベルを持って、みんなでスタジオの近所にある公園に出掛けてみた。木々の葉の音、噴水の水音、蝉の鳴き声や公園で遊ぶ子どもたちの歓声に混じって、ウッドベルも吹き抜ける風に呼応して、コロコロ、カラカラカラと音を鳴らしてくれる。小さな音なのに、はっきり耳に届くのは、自分たちでつくったモノだからかもしれないが、その音は、そこに風が吹いていることを教えてくれる。

 「風や光、川の水の流れなども揺らぎです。そういった自然のリズムは、やっぱり心地良い。それから木の種類によっても音は変わります。軟らかい材質、固い材質。今回は、フローリング用の無垢の端材を使ってみましたが、例えば、森や山に遊びにいったときに小枝を拾ってきてつくるのも面白いかもしれませんね」。

 自分でつくったウッドベルにはしゃぐ子どもたちを眺めながら、佐々木さんはそう語ってくれた。

佐々木真一 ささき・しんいち
デザイナー。
オランダ園芸デザイン・マスターの資格をもつ。
植物に関連したデザインの仕事をメインに、空間デザインなども手がける。
多彩な趣味をもち、楽しく暮らす達人でもある。

ページトップへ