SOTOKOTO Report Vol.12 多摩ニュータウンのソーシャルな挑戦。

多摩ニュータウンのソーシャルな挑戦。

 高度経済成長期に増えた東京都心の人口。住宅問題を解消するために生まれた多摩ニュータウンは街開きから40年が過ぎ、建物の老朽化や団塊世代の高齢化の時期に差し掛かっている。「老朽団地」や「シャッター商店街」というネガティブなキーワードも報道などから聞こえる。

「でも実際は、多摩ニュータウンの人口は今も増えているんです」と、建築家の秋元孝夫さんは言う。多摩ニュータウンは町田市、八王子市、多摩市、稲城市にまたがる広域都市計画。多摩市のニュータウン区域は人口減少にあるが、全体で見ると増加傾向にある。「老朽化で住み替えがうまくいかずに高齢者世帯が増えている集合住宅もあります。だけどそれは一部であって、多摩ニュータウン全体の話ではないんです」。

 多摩ニュータウン初の大型建て替え事業も進む。「諏訪2丁目住宅マンション」(23棟・住宅640戸)を、「Brillia多摩ニュータウン」(7棟・住宅1249戸)として新たに建て替える事業だ。元の住民のほとんどが新マンションに入り、新規販売の第1期分は即日完売したというから人気の高さが分かる。だが、この建て替えの成功例を、すべての多摩ニュータウンに当てはめることはできないとも秋元さんは言う。

「諏訪2丁目は、40年前から住民たちが手探りでマンション管理をしていました。窓口をつくり、スタッフを常駐させ、頻繁に行事を行って親睦を深めていきました。そうして、徐々にコミュニケーション力を高めた。そんな場所だからこそ、建て替えが成功したのだと思います」

 秋元さんはそのコミュニケーション力こそが、多摩ニュータウンや日本の住環境に必要不可欠であると考える。その力を活かす一つの形が「コーポラティブ住宅」という住空間だ。コーポラティブ住宅とは、その土地に住みたい人が集まって土地を共同購入し、設計・工事を発注する住宅建設方式。土地の決定や建物の形などを話し合って決めるため、竣工までには膨大な時間とパワーが必要だ。中には折り合いがつかず、計画から離脱する人もいる。これまで秋元さんの手がけたコーポラティブ住宅は平均3〜4年かけて造られ、建物ができる頃には住民間にコミュニケーション力がついている。

「コーポラティブ住宅づくりはドラマ。たしかに大変な作業です。だけど、住まいづくりってそういうものだったのかもしれませんね(笑)」

「共有」から生まれること。

 多摩ニュータウンには"資力信用"のある大手のハウスメーカーが事業参加した結果、小さな敷地は利用されないまま残っているという。中には駅近の「掘り出し物」もある。秋元さんが手がけたコーポラティブ住宅「永山ハウス」は永山駅から徒歩3分。「住み慣れた場所に近い」「コミュニティがあり、安心できる」と幅広い層に人気で、現在は永山近辺で別のコーポラティブ住宅計画を進行中だ。

「土地をシェアするという概念は難しいかもしれない。だけど、『共有』という精神は日本にそもそもあったはずです。共有を考えると日本はもっとよくなります。人と人が触れ合わない限り、コミュニケーションは成り立ちません。喧嘩したっていい。喧嘩しても話し合えば、その後に理解が生まれる。コミュニティとは触れ合い、そして乗り越えていくものです。核家族を少し超えたご近所づき合いが理想かな。それが次なるコミュニティの姿かなと思いますね」

What's
Tama New Town?

多摩ニュータウンとは?

東京都南西部に位置する多摩、八王子、町田、稲城の4市にまたがる、多摩丘陵にあるニュータウン。東西約14キロ、南北2〜4キロ、人口は約20万人。誕生から40年が経ち、多摩ニュータウン内に団塊の世代が集中していることから「多摩ニュータウンに住む人の高齢化」が、今後急速に進むことが指摘されている。しかし都心へのアクセスもよく、学校や病院などの施設も完備されており、ファミリー層にも依然人気が高い。
ソーシャルな挑戦 case1

諏訪2丁目住宅
マンション建替事業

老朽化した23棟・640戸の団地をほぼ2倍の規模の新築マンションに建て替える日本最大規模の建て替え計画。建て替え検討委員会が発足してから約四半世紀。2013年10月に竣工予定。ニュータウン建て替えの成功例と注目されるが、40年の歴史で育まれた住民のコミュニティ能力の高さがあったからこそ成功したともいえる。
ソーシャルな挑戦 case2

「永山ハウス」
プロジェクト

23世帯が暮らすコーポラティブ住宅(その場所に住みたい人が集まって設計・工事を発注する手づくりの住宅建設方式)。住宅を造る過程で独身世帯、若いファミリー世帯、高齢者世帯らが互いに尊重しあい、支え合うコミュニティが誕生した。1階は医療機関やレストランに貸し、その家賃収入で修繕積み立て代などを捻出する。
living box

困助(こんすけ)プロジェクト
NPO多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議のなかから生まれた、地域の住民同士、互いに助け合おうというプロジェクト。日々の暮らしで出てくる設備、家具、建具などの修理や交換に、中立・公平な立場で専門業者を紹介したり、作業のサポートを行う取り組み。
www.machisen.net/konsuke



秋元孝夫
あきもと・たかお●秋元建築研究所代表、NPO多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議副理事長。コミュニティ、家族、個人にふさわしい「場」を模索し、街や住宅づくりを手がける。永山ハウスに続く「安気な住まい」プロジェクトがスタート。詳しくは事務局tel.042-337-5600まで。

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