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廃熱を電気に変えて、世界を明るくします! TESニューエナジー代表取締役CEO 藤田和博 Kazuhiro Fujita 東日本大震災をきっかけに開発された「発電鍋」。世界を見定め、iPhoneにも充電できることにこだわったこの鍋は、現在、アフリカの田舎の学校で使われるなど、途上国でも活躍している。さらに、同様の廃熱利用発電技術で日本の山々を元気にする「山村再生プロジェクト」も進行中。「電気をつくる」楽しさを教えてくれる。 photographs by Masaya Tanaka text by Sumika Hayakawa

きっかけは3.11。自社技術で被災者の役に立ちたかった。

鍋を火にかけ、お湯を沸かすことで発電もできる「発電鍋」。鍋の内側と外側の温度差を利用することで発電が可能になるという仕組みだ。この鍋は日本の山村で自給自足的な生活を目指す人たちが電気を必要とする際や、アフリカの電気のない村の学校で生徒たちが夜、勉強するときに使われていたりする。

この発電鍋を開発した『TESニューエナジー』の社長・藤田和博さんに、発電鍋が誕生した経緯や今後どんな展開を考えているのかを尋ねてみた。
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上/鍋底と鍋の中身の温度差を利用し、鍋底に取りつけた「熱電モジュール」で発電する。下/実際にお湯を沸かしながらiPhoneをつないでみると、すぐに充電が始まった。

この発電鍋はもともとどういう経緯で開発・販売されるようになったものなのでしょうか。

きっかけは東日本大震災です。私の会社『TESニューエナジー』には、もともと熱を電気に換える技術がありました。工業炉や産業廃棄炉の壁に製品を取りつけ、その壁の熱を利用して電気をつくるために様々な試作機を作っていたんです。それを鍋に応用しました。30個ぐらい鍋を買ってきて、熱の伝わり方や鍋の耐久性を試して……。

鍋というのは、普通のスーパーなどにある鍋ですか?

ええ。大量生産するとしたら安くしないといけませんから。100円ショップでも買いました。

すでに技術はお持ちだったということですが、完成までにどのぐらいかかったのでしょうか?

ちょうど3か月ですね。鍋に発電材料を取りつけて発電させること自体はそれまでの技術の応用で、難しくなかった。難しかったのは「iPhoneを充電する」こと。普通の携帯電話であれば問題なかったのですが、どうしてもiPhoneの充電に対応させたかったんです。そこに手間取りました。その頃、iPhoneはほとんど技術が公開されていなかったので、回路などの関係がよくわからなくて、そこで試行錯誤しました。

そこまでしてiPhoneにこだわった理由は何でしょう?

やはり世界に通用するからですね。日本のケータイで、国内でやりとりができるだけでは、これからはダメだと思ったんです。iPhoneに充電できるということは、世界の人に使ってもらえるということです。これからはそれが必要だと。ただ、それはiPhoneがあったからそう考えたわけではありません。熱を電気に換える技術を持った会社をつくった時点で、「世界規模のものをつくる」ことは強く意識していました。

その鍋は被災地に送ったのですか?

いえ、その頃はもう6月でしたから、被災地に電気は通っていました。だからニューヨークにハリケーン・サンディが来たときに、そちらに送りました。

現在、発電鍋の販売は世界規模で展開されていますが、もっとも顧客の多い国はどこでしょうか?

やはり日本がいちばん多いですね。続いてアメリカで、次がドイツかスイス。

では、先進国の方がエコロジー目的で買うことが多いのでしょうか?

そうですね。スイスなどでは山に別荘を持っている人が、そこには電気が来ていないので買っていく場合が多い。あとはアラスカとか。

アフリカの子どもに、明かりによる学習機会を届けたい。

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ウガンダなど電気のない村で夜間にLED照明を灯し、学校などで勉強する子どもたち。世界には今も、昼は家の手伝いをし、夜にしか学校に行けないという子どもも多い。教育水準が上がることで人々が貧困から抜け出せればと、藤田さんは考える。

アジアやアフリカなど、資源に乏しい国や電気の通っていない山村のある国のほうにより需要があるのだと思っていました!

もちろんそういった場所にも需要はあります。ただ、需要があると気づくのに少し時間がかかりました。売り出して1か月後に、ウガンダで学校を建てる福祉プロジェクトをしているという知人から電話をもらい、その村には電気が通っていないからどうしても欲しいと言われたんです。携帯電話とLEDランプの充電をしたいと。それで初めてそういう場所を意識し始めました。その知人からの連絡がなかったら、先進国に向けたエコロジー的な発想か、もしくは災害用かのどちらかの目的ばかりを考えていたかもしれません。

実際にこの鍋は、どういった場所で、どんなふうに活躍したのでしょうか?

アフリカには夜しか学習する時間がない子どもも多くいて、そのときに必要な明かりをつくることができました。電気があることで勉強ができるし、必要な情報にもアクセスできる。アフリカの貧困は教育の機会がないことが原因でもあるので、そんな夜間学習の場が増えれば収入も上がって、より良い生活を目指せるのではないでしょうか。

太陽光と熱のデュアル発電を搭載した屋台「ワンダーワゴン100」も非常にユニークな製品ですね。この屋台の発想はどういう経緯で?

屋台については(東アフリカの)ウガンダの方と、貧困層の女性ができるビジネスはないかというディスカッションをする機会があって、そのときに出てきたアイデアなんです。屋台で食べ物を売りつつスマートフォンの充電をして、なおかつテレビでサッカーの中継でも見せたらいいんじゃないかと。私自身は現地に行ったことはないのですが、現地の方とお話ししたり、写真を見たりすると「こういうものが必要なんじゃないか」ってひらめくんです。

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「ワンダーワゴン100」はアフリカで使うことを想定し、色も太陽に負けない鮮やかな赤にした。左は開発と製造担当の社員・浦田友幸さん。

この屋台でいうと、たとえばほかにはどういう工夫がありますか?

太陽光発電や蓄電設備もさることながら、簡単に組み立てられる点ですね。つくりが単純で、タイヤもパンクしない素材でできている。向こうだったら絶対に現地で使用者本人が組み立てるだろうし、タイヤがパンクしても修理するところがないでしょうから。

逆に使用する方の要望を受けて作ったり、作り直したものはありますか?

あるカメラマンの方が外でノートPCを使って、撮影した画像を送信するために電気を使いたいと言っていて、そのために「ファイヤーパワー40」という薪や木材で発電できる製品を製作しました。野外で小型の薪ストーブで火をおこしたり、たき火をしながら使うことを想定したものです。発電鍋だと30ワットぐらいが限界なんですが、40ワットはないとノートPCを動かし、画像を送るということができません。それで木材を燃やす熱を利用することにしました。

電気を地産地消し、過疎化した山村を活性化させたい。

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熱電モジュール製作に必要な部品の数々。

木材を燃やすといえば、今度、山村の廃木材を利用する「山村再生プロジェクト」を始められるそうですね?

山の間伐材や農業廃棄物を燃やして、家庭用・事業用に発電するプロジェクトです。現在は和歌山や長野など、山が多く、間伐材も出やすいところで試験的にやっていますが、最終的にはそこの人たちに使ってもらい、フィードバックをいただいて、というサイクルになればいいなと。今は若い人に山村に定着してほしいという動きが大きいですよね。そのためにも電気は欠かせません。それを廃材でまかなえば、山自体も元気になります。電気を地産地消することで地域活性化のお手伝いができればと考えています。

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アイデアは日々の雑談の中から生まれることも多い。

東日本大震災以降、主に若年層の考え方が変わったような気がします。多少不便でも循環型の生活、地産地消の生活をしていくほうが、長い目で見たら地球や環境、ひいては自分たち自身を守ることにつながるのではないかと。「山村再生プロジェクト」はそんな考え方に合致していますね。

そんな感覚に変わった理由のひとつには、東日本大震災のほかにやはりスマートフォンが一般に広がった影響もあるでしょうね。これさえ1台あれば、どんな寂しい山村にいようといろんな情報を取り出せて、世界と共存できますから。

出発点でiPhoneにこだわったことが、深い意味を持ちましたね。世界とリンクするためのスマートフォン、その電気を自分でつくれるって、すごいですね!

藤田和博 Kazuhiro Fujita

藤田和博 Kazuhiro Fujita
ふじた・かずひろ●1952年福岡県出身、九州大学理学部物理学科卒。アメリカやデンマークの会社で医療や遺伝子、バイオ技術関連の研究・開発に携わった後、2004年に産業技術総合研究所のアドバイザーに就任。様々なベンチャーの立ち上げに関わった後、2010年、『TESニューエナジー』を設立し、熱を電気に換える技術を活かしたプロジェクトを展開。

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