ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

福岡伸一の生命浮遊

KEYWORDSで絞り込む

vol.138 新種の発見

今となっては考えられないことだが──つまりヒトゲノム計画が完成し、すべての遺伝情報がデータベース化されてしまった現在から見ると、ということだが──タンパク質、そしてその設計図である遺伝子(DNA情報)は、私が分子生物学の研究に入った当時の1980年代、ほとんど未知の領域に属していた。

vol.137 存在場所が
存在意義を規定する

GP2(グリコプロテイン2型)遺伝子は、タンパク質としてのGP2の設計図である。GP2遺伝子にGP2タンパク質のアミノ酸配列が暗号化されていて、細胞内で、その暗号にしたがってアミノ酸が順次連結されていくと、GP2タンパク質が出来上がる。

vol.136 遺伝子の森に分け入る

ヒト・ゲノム計画が完成したのは2003年のこと。遺伝暗号の端から端までがすべて解読され、そこに載っている情報が全部、データベース化された。30億文字からなるヒトのDNA全体をゲノムと呼ぶが、これをすべて網羅的に解読してしまおうという計画に対しては、当初(1980年代の終わりから90年代初頭にかけて)内外の科学者自身からも懐疑的な批判がなされた。

vol.135 ガン治療の画期的な展望

私たちヒトは、受精卵から出発する多細胞生物。一個の細胞である受精卵は、どんな細胞にでもなりうる潜在能力を持った真の意味の万能細胞である。細胞分裂を繰り返し、増殖していくプロセスにおいて、徐々に細胞は個性を持つようになる。これを細胞の分化と呼ぶ。その仕組みについては前回触れたとおりである。

vol.134 細胞の分化と初期化

われわれ多細胞生物の細胞は──それはヒトの場合、総計数十兆個になると推定されるが──もともと精子と卵子が合体してできたたったひとつの受精卵細胞に由来する。受精卵細胞が分裂を繰り返し、2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024と増えていく過程で、徐々に変化を遂げていく。

vol.133 腹痛と白血球

大昔のことである。当時、私は貧乏な研究学徒の卵。その夜も遅くまで下宿の狭い部屋で一人、論文を読んでいた。深夜も回っていたと思う。突然、右の脇腹がキリキリと痛み出した。肋骨の下、腰骨の上あたり。少し待てばおさまるかと思って我慢していたが、逆に痛みがどんどん増してきた。

vol.132 免疫力でがんに挑む1

19世紀末、米国の医師ウィリアム・コーリーは、がんの患者が、細菌に感染し高熱に苦しんだ後、しばらくするとがんが縮小していることに気づいた。がんと細菌は、本来は無関係のはずである。コーリーは、がん患者にあえて細菌を意図的に感染させることによってがんの治療をめざす実験を始めた。

vol.131 発がんとストレスの奇妙な関係

私たちの身体に備わっている免疫システムは、身体の中に発生した異常な細胞(その典型例はがん細胞である)を初期のうちに発見し、除去してくれる。私たちの身体は数十兆個の細胞からなっており、そのほとんどの細胞が常に更新されている。つまり古くなった細胞が死に、あるいは積極的に壊され、新たにできた細胞に入れ替わる。

vol.130 がんの転移と免疫

前回紹介した『ニューヨークでがんと生きる』の千葉敦子は、乳がんを患い、その後、繰り返し起こった転移・再発と闘い続け、彼女が終(つい)の生活の場として選んだ街・ニューヨークで、親しい友人たちに看取られながら旅立った。享年43という若さだった。

vol.129 「がんと生きる」を考える

本棚から古い本を探し出す。千葉敦子著『ニューヨークでがんと生きる』。1ページ目。物語はこう始まる。〈次のステップを踏み出さなければならないことは分かっていた。次のステップが何であるかも分かっていた。それでも、思い切って踏み出すのには、かなりの勇気を要した。〉

ゴミ、捨てんなよ!

Copyright © KIRAKUSHA, Inc. ALL rights reserved.