ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

福岡伸一の生命浮遊

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vol.155 探査針はGPS

さて、いよいよ遺伝子の隠れ家を突き止めるときがきた。少し前の回に書いた千枚漬けの話を思い出していただけるだろうか。直径10センチほどの白いナイロン製の薄い円盤のことを千枚漬けに例えた。わたしたちはこの円盤のことを通常、フィルター、もしくはメンブレンと呼んでいる。

vol.154 アイソトープのラベル

前回は「宝探し」の準備の手順を説明した。今回はその続き。DNAライブラリーに由来するコロニーが固定された“千枚漬け”(円形のナイロンフィルター)を入れたジップロック・パックに、宝物を探査するためのプローブ(短い一本鎖DNA)を混ぜ、パックの入り口をシールして密封する。

vol.153 ナイロンフィルターを
漬け込む

それは一見、千枚漬けの作業工程に似ている。私は京都で学生生活を送ったので、その様子を見たことがあったのだ。京都名産の京野菜である聖護院かぶの皮をむき、薄くそぎ切りにする。直径10センチあまり。それは円形のナイロンフィルターにそっくりだ。それを樽の中に一枚一枚ていねいに並べて敷き込んでいく。

vol.152 コロニーを転写した
フィルターを作る

これまでの回で、細胞で発現している遺伝子群、つまりメッセンジャーRNA(mRNA)をそのままDNAに写し取る方法、すなわちcDNAライブラリーを作る原理について細かいことをいろいろ説明してきた。ここから先は、いかにしてそのライブラリー(図書館)から、目的の書物を探し出すかについて考えてみよう。

vol.151 cDNAライブラリー

細胞から全部のmRNAを抽出し、逆転写酵素を使って、DNAを作り、そこからcDNAを合成すると、もともと細胞内にあったすべての種類のmRNAは、まるごと安定したcDNAに写し取られることになる。また、mRNAの量的な分布も、そのままcDNAに反映されることになる。

vol.150 mRNAからcDNAへ

DNAはデオキシリボ核酸、RNAはリボ核酸で、どちらも非常に似通った化学構造なのだが、ほんのひとつ、デオキシ構造(水酸基-OHがない)の差異だけで、物質としての安定性が格段に違ってくる。DNAは化学的に安定的で、RNAは化学的に不安定な(分解を受けやすい)物質なのだ。

vol.148 遺伝子釣り~DNAとRNA~

前回は、釣り針(タンパク質のアミノ酸配列情報から得た遺伝子暗号候補)を使って、それと相補的な配列を有する遺伝子本体を釣り上げる技術の原理を話した。その際、省略したことについて今日は述べておこう。細胞の中、細胞核の内部に折りたたまれて鎮座しているDNA(その総体をゲノムと呼ぶ)は、情報を安定的、かつコンパクトに保持するため、二重らせん構造をしている。

vol.147 遺伝子を釣り上げる

タンパク質のアミノ酸配列の情報をもとに、塩基配列情報を推測する。これをもとに遺伝子を釣り上げることができる。これを遺伝子クローニングという。ゲノム計画が完成するまでは、遺伝子の全体像はまさに地図のない、まったくの未開の大陸だったから、私たちは手探りで進むしかなかった。

vol.142 タンパク質の
アミノ酸配列を決めるには

ヒト・ゲノム計画が完成し、今ではすべての遺伝子情報がデータベース化されているので、研究に必要なDNA配列は、コンピューターを使ってちょっと検索すれば誰でもすぐに知ることができる。つまり地図にはすべて地名・番地が記入され、どこに何があるか簡単に調べられる。

vol.138 新種の発見

今となっては考えられないことだが──つまりヒトゲノム計画が完成し、すべての遺伝情報がデータベース化されてしまった現在から見ると、ということだが──タンパク質、そしてその設計図である遺伝子(DNA情報)は、私が分子生物学の研究に入った当時の1980年代、ほとんど未知の領域に属していた。

ゴミ、捨てんなよ!

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