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駒崎弘樹の日本の第三の道 地域の特徴を生かすことで、地域のダイバーシティはもっと輝く。

駒崎弘樹 こまざき・ひろき × 長谷部 健 はせべ・けん

駒崎: 2015年末に、カリフォルニアのシリコンバレーに視察に行っていたとのことですが、あれは、どうして行ってきたんですか?

長谷部: 中学生を派遣する「シリコンバレー青少年派遣研修」をしたいと思っているんですよ。それで、教育長、小学校長、中学校長、指導主事たちと視察に行ってきました。IT技術に長けた若い才能って、たくさんいるでしょう? 頭がよくて、才能はある。

駒崎: なるほど。確かに一つのことに熱心に関わり続ける特性を持ったような子どもたちは、IT業界でイノベーションを生み出していく可能性が高いですよね。今の日本の学校ではちょっと日陰の子も、シリコンバレーでは光り輝くかもしれない。

長谷部: そう、だから、最先端のシリコンバレーの現状をこの目で見たかった。子どもたちに現場を見せて、将来に明かりを見つけてくれればうれしいなと思ったんです。シリコンバレーで頑張っている日本人もたくさんいますしね。スタンフォード大学では、子どもたちが授業を受けられないかというような交渉をしてきました。

駒崎: それ、子どもたちが参加できたら最高ですね。その子たちが大きくなって、渋谷で起業するかもしれないし。

長谷部: 渋谷の資産ともいえるIT系の仕事に関して、何かできないかとずっと思っているんです。それに渋谷はIT企業の集積地ではあるけれど、世界的に成功しているシリコンバレーとは何が違うかも確かめたかった。それがわかれば、行政としてどういう応援の仕方があるのかがわかる。

自分たちの払っている住民税を「何でIT企業にばかり使うんだ」って声があるんだったら、例えば「ふるさと納税」の逆張りパターンで、渋谷で起業する企業に貢献したもらえるといい。「ふるさと納税」に関していえば、渋谷は持っていかれるばかりだから(笑)。もちろんITに限らず、この街で生き生きとするため税金を使いたいですね。

駒崎: シリコンバレーに行ってみてどうでした? 渋谷とは、何が違いましたか?

長谷部: 大きく感じたのは、イノベーションを起こすときの空気と寛容度。例えば、「Uber」とか「Airbnb」という仕組みは日本人だって考えられる。だけれど……。

駒崎: 既得権益を侵しちゃうかもとか、規制があるなあとか、旅館業法に触れちゃうよな……って思いますよね。

長谷部: でも、アメリカでは、「ニーズがあるしユーザーがいそうだから、ちょっとやってみようよ」と、軽く一歩を踏み出せる。そのときに、行政は何をしているのかというと、問題が起きるまでただ見ている。うまく育ったら、それは良かったねとなるし、問題が起きたらそれを解決していく。視察前に思っていたよりも、根本的な違いがありましたね。渋谷がそうなれるかといったら、難しくもあるんだけれど。

駒崎: そうか、寛容さですね。現地で働いている日本人や起業家にも会ったんですか?

長谷部: 会いましたね。どうして日本でやらなかったかを聞くと、それぞれいろんな理由があるんだよね。でも共通しているのは、日本だけのマーケットよりも世界で勝負したほうがいいとはみんなが言っていた。もはや世界中の情報が簡単に手に入るし、世界が近くなっている。言葉の壁を越える時代もすぐ来るよね。

駒崎: 例えば、起業を応援してくれたのが渋谷区だったら、いつか渋谷に還元してくれることもあるでしょう。スタンフォード大学なんてまさにそうですよね。

長谷部: 学校で支援してもらって、成功したら、莫大な寄付をする。それを原資にまた次を生み出すみたいな。それも行って見てわかったことだね。

シリコンバレー青少年派遣研修
渋谷区が行う、「海外都市交流青少年派遣研修」の新たな派遣先として検討されているシリコンバレー。IT企業やハイテク産業が集積する同地で中学生のキャリア教育を実施する予定。
Uber
ウーバー。サンフランシスコ発のサービス。携帯端末によるタクシーの配車以外に、移動したい人と近くを走る一般車両とのマッチングも。日本では規制により、後者のサービスは未実施。
Airbnb
エアビーアンドビー。「民泊」をWEB上でマッチングするサンフランシスコ発のサービス。旅館業法による規制を緩和して、東京五輪を前に宿泊施設の不足問題を解決しようという動きも。
スタンフォード大学
グーグルの創業者や、ヤフーの元・CEOなどを輩出してきた、シリコンバレーにあるアメリカの大学。同大学が2015年度に集めた寄付金は16億3000万ドルで、大学としては全米一。

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