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駒崎弘樹の日本の第三の道 霞ヶ関に頼らずに、課題の現場=地方から解決策を生み出す時代へ。

駒崎弘樹 こまざき・ひろき × 木下 斉 きのした・ひとし

駒崎: 先日、国家戦略特区で「往診に関する」提案をしました。診療報酬が認められる往診は、なぜか「診療所から16キロまで」という規制が存在するんです。

木下: それは、どういう理由で「16キロ」なんでしょうか?

駒崎: 厚労省に尋ねたけれど、距離の根拠は不明で、この規制の必要性がいつできたのかわからないくらい古いルールでした。『フローレンス』の病児保育は、首都圏で展開しています。しかし、この16キロの規制があると、連携してくれている往診医は首都圏全体をカバーすることができません。

木下: かなり狭い範囲ですよね。タバコ屋みたいなルールなのかな。日本の悲しいところは、いちどつくられた「制度」は全部残っていくんですよ。地方の政策も一緒で、高度経済成長期の住宅政策がいまだに残っていたり、昭和20年代の都市計画道路をいまだにやっていたり……。

駒崎: 政策断捨離が必要ですよね。今後は全部サンセットでいい。

木下: そう、基本的にはサンセットがいいですね。毎回更新の時には、無理矢理にでも時代変化に対応するために議論が起こるので。それにしても、いまだ残る制度で感じるのは、今ある政策や計画を作った当時は、永久に右肩上がりの時代が続くと思っていたんですよね。

駒崎: でも今は当時と状況が違うから、「16キロって、意味ないですよね」って国家戦略特区の委員会に持っていって、16キロのルールを廃止してもらったんですよ。

実際におかしいと思っていても、それを内閣官房に行って「おかしいよね」って言ったのは僕が初めてだったと思うんですよ。制度を変える、更新するというのは、意外とその程度の話なんですよね。言やあいい、ってことがたくさんある。

木下: そうですね、よくありますね。

駒崎: 全国津々浦々、賞味期限切れの政策と制度が腐るほどあるから、「これはやめようよ」って言いにいくゲリラ戦を戦わなきゃいけない。そういう人を育てたり、インスパイアしていかなきゃいけない。

みんな、サーカスのゾウと一緒で、自分の動ける範囲は決まっていると思っている。今の多くの日本人は、多分そうしつけられていて、変わらないと思っている。でも、官僚たちに「これやってくれ、あれやってくれ」って言えるようになれば、世の中はもっと変わっていくとはず。中央官僚たちも、このままじゃいけないとは思っているから、世の中を動かせる球を求めていたりしますし。

木下: 官僚も“課題”を探しているんですよね。問題がそのままでいいと思っている人は少ない。ただ、前提から含めた大幅な変更とかについては、やはり個人とかで動いても無理だとみんな諦めちゃっている。

さらに、何かが一度決まると、日本人は協調性を重んじて「異論を唱えてはいけない」ようにしつけられているから、他がやっていないものをやるっていうのは、地方にとってはハードルが高いんですよ。今までは他でやっていて、自分の地域でやっていないことをやるのが基本だっただけに、他がやっていないことを自分で“考える”のはハードルが高すぎる。

たとえば誰もがやるものといえば、多目的体育館があります。しかし、今はそんな施設をどこに造ろうとも、活性化にはつながらない。全国にないもので、しかも自分たちが採算が合うように営業できるもので施設を整備していかなきゃいけない。さらに施設は、造ったら人が来るわけではなくて、造って営業するから人が来る。昔は箱ができたら物珍しさで人は来たけれど、もはや施設を造ったからって人は来ない。

このような前提変化を自分で考え、さらに過去のやり方を変えていくというのは、二重に難易度の高い話なんです。

駒崎: そうですよね、あちこちでいまだ同じようなものが造られ続けている。

木下: かつては、「道の駅」も珍しかったけど、もうどこにでもありますよね。でも、ルールと予算は残るから、どんどん造り続けている。そこには、競争戦略がないので、隣近所で同じようなものを造ってしまう。結局のところ、赤字施設が増加したり、黒字になっていても、蓋を開けてみると役所が委託料とか出しているだけで、地域としては実質赤字だったりする。そして最終的には、そのほとんどが共倒れになっていくんですね。

駒崎: 競争はないですよね、たしかに。

木下: 地方は都心回帰し、何の特徴もなくなって、結局のところみんな駄目になってしまう。自分たちがやっている行為が何を意味しているか、を改めて考えると、地方で再開発するなんて恐ろしくてできない。

タバコ屋みたいなルール
タバコの小売業を行う際の制約の一つに、最寄りのタバコ販売店からの距離がある。繁華街や住宅地など環境区分と、指定都市など地域区分に基づき、最低25mから、300mまで段階的に定められている。
サンセット
事業の期限を定めることで、その終了時に議会が組織や政策を承認しない限り、自動的にそれを廃止するルール。
サーカスのゾウ
サーカスのゾウが逃げないのは、小さな時に円から出るなとしつけられていて、大きくなっても円から出られないと思っているからという寓話。

ゴミ、捨てんなよ!

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