ソトコト ソーシャル&エコ・マガジン

駒崎弘樹の日本の第三の道 保育園すらつくれない日本。民主主義が抱える根深い問題とは?

駒崎弘樹 こまざき・ひろき × 東 浩紀 あずま・ひろき

東: 地方の生活を東京並みに便利にするには膨大なコストが掛かります。その点では、お金のない若者、高齢で一人暮らしがままならない方、障害を持っている方が東京に集まってきたほうが、効率のいい支援ができるはずです。

駒崎: 東京が超福祉都市になり「東京こそが日本を救うんだ」っていうモデルになるということですか。

東: そういう考え方もできるはずです。

駒崎: 今は逆ですよね。タワーマンションが湾岸部にバンバン建つようになって、金がある人だけ、職住接近化が進んでいます。

東: 実際には東京23区の不動産は余っています。安い家賃で入居できるよう、行政が支援するといいかもしれない。

駒崎: ええ。空き家対策は税制でなんとかなると思います。アパートの固定資産税の課税標準は「小規模住宅用地」が適用され6分の1(または3分の1)に軽減されますが、この時に入居しているかどうかは関係ありません。だからオーナー側は空き家であってもいいと考える。この部分をオーナー側の負担が増える税制にすれば、家賃を安くしても人を入れるようになりますよね。

東: 大家が価格破壊を恐れているから、東京の家賃が下げ止まりしていると。

駒崎: 税制はインセンティブ(動機付)の仕組みなので人の行動を変えますね。

東: 家賃補助などは23区が特区化すればできるのかもしれない。いずれにしろ、こういう発想を進める政治家がほしいですね。この問題も突き詰めれば「日本って何なんだ」という話になる。

駒崎: というのは?

東: 江戸時代に遡るまでもなく、日本というのは“諸国連合”の国なんですよね。明治維新にしても、薩摩と長州の地方連合政権が日本を乗っ取ったという話でしょう。戦後は一時東京集中が進んだけれども、田中角栄以降はまた「国土の均衡な発展」という地方重視の政策に戻った。政治はどうしてもまず第一に地方を配慮しなけれがならない。日本はそういう歴史的条件を抱えている国なんだと思うんです。

駒崎: それは今も……。

東: 考えてみれば、安倍首相も山口(長州)だしね。アベノミクスも「まずは地方」を強調するでしょう。逆に「これからの日本は東京に賭けていくしかないのだ」という政治家が現れてもいいと思いますけどね。

駒崎: 今回の都知事選挙は小池百合子さんの圧勝でしたけど、今後の東京都知事は、さらにしっかり考えて、いい人を出さないと駄目ですね。

東: 東京は人口1362万人ほどだけど、首都圏は3400万~3700万人くらい。日本がダメになってきたといっても、東京と周辺都市の競争力はまだまだあります。

駒崎: 東京のGDPは世界トップクラスですからね。あとはいかに選択と集中をしていくか。わが国の政治風土などを見渡すと絶望が深くなる一方で、「民間」である我々ができることは何かと考えさせられます。『保育園落ちた日本死ね!』の例を見ても、民間からの突き上げは、それなりのリアクションがあるという手応えを感じました。

東: しかし、せっかく盛り上がった保育園問題も、東京・杉並区で保育園が住民の反対運動に遭ってしまった。

東京のGDPは世界トップクラス
東京都庁が発表した2013年のデータによると、都内における総生産は93兆円だった。同じ年の日本の名目国内総生産は、485兆円。東京だけで、日本のGDPの19.2%を占めることになる。
住民の反対運動
2016年1月、杉並区で住民の反対意見により、保育園設立の計画が白紙になった出来事が世間の注目を集めた。区は久我山東原公園を含む、13か所の場所に認可保育所の設立を目指していたが、実現したのは7か所だけだった。

ゴミ、捨てんなよ!

Copyright © KIRAKUSHA, Inc. ALL rights reserved.