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がれきに花をさかせましょう!

平成のはなさかじいさんになろう

宮古市や南三陸町で、大量のがれきから流木などの素材を選び、黙々とオブジェをつくる前野さん。

 東日本大震災以降、東北の方々のためになにかできないか、なにかしたいという思いはありました。しかし、まず衣食住が満たされないうちは、華道家としての私の役割はないのではないかと思い、東北には入らずに、チャリティコンサートなどを開いていました。

 少し気持ちが変わってきたのは、昨年末くらい。花は、人にエールを送ったり、力づけたりしてくれます。草月流の初代家元・勅使河原蒼風先生は、戦後、焼け野原の中で、「花がなければ土をいけよ。土がなければ、石をいけよ……」、つまり華道家にとっては、万物すべてが「花」であるとおっしゃっていました。そんな花の力を伝えることが、華道家の役目ではないかと考えるようになったのです。そして、そのときにふと浮かんだのが「枯れ木に花を咲かせましょう」というセリフ。夢と希望がある言葉でしょう。誰もが知っているストーリーにのせて、人の心に花を咲かせる“平成のはなさかじじい”となって、東北の人たちを元気づけようと考えました。そして、私以外に賛同するアーティストが6名集まり「平成のはなさかじじぃず」が結成されました。

東北のがれきに子どもたちと希望の花を咲かせる

宮古市の「千徳学童の家」で行った「旅するクジラ」づくり。子どもたちの元気さと明るい絵に、「ほっとしました」と前野さん。

 さて、ではどんな活動をしようかと考えていたときに、環境省の方から、がれきの広域処理の話をうかがいました。受入れ先を早く見つけるために、なにか一緒にできないかということです。ただ、がれきについては本当に安全なのか、また広域処理をすることがいいのかなど、多様な意見があることも知っていました。そこで、実際に私自身ががれきの現状を知らなければ、と南三陸町に向かいました。

 南三陸町のがれきは、1年たった今でも10メートルもの高さに積み上げられていました。中には、ピアニカやぬいぐるみ、子どもの洋服など人の営みを感じさせるものが多数混ざっていて、「これを地元の人に処理させるのは酷なことではないのか」と実感しました。南三陸町の人たちにとって、がれきがなくなって初めて「ゼロ」の状態になれるのです。そのためには、日本人全員が力を合わせたほうがいい。もちろん、がれきの安全性も、私自身が測定器で放射線の数値を測って確認しました。

がれきに花をあしらったオブジェ。上は、環境省の大臣室に設置されたもの。下は、護国寺に奉納したときの様子。

 そのがれきの中には、いくつかとてもいい形の(といっては地元の人たちに失礼かもしれませんが)流木がありました。それと、南三陸町の子どもたちに描いてもらった絵で「希望の塔」をつくろうと考え、実際にワークショップを行ったのは、視察から1週間後のことです。震災から1年、子どもたちがどんな絵を描いてくれるのか、不安もありましたが、実際に描かれた絵は海や山、花、虹など元気いっぱいの明るいものでした。がれきで骨組みをつくり、子どもたちの希望の花(絵)をつけていくと、子どもたちから「あ、クジラだー!」という声があがりました。そうとは意識していなかったのですが、窓から見える海をバックにつくられたオブジェは、本当にクジラに見えました。海を守り、再生のイメージもあるクジラは、花が咲いたがれきが希望あるものに変わる、また東北の地が再生していくシンボルとして、これ以上のものはありません。

 オブジェは「旅するクジラ」と名前をつけて、がれきの安全性、がれき処理に日本中で取り組んでいかなければならないこと、がれきがなくならなければ真の復興も始まらないこと、そうしたメッセージを伝えるために、解体され、東京の丸の内や代々木公園、環境省などで展示しました。

人という花を日本という器に咲かせたい

6月7日、東京の護国寺で行われた「天地創生~がれきに花を咲かせましょう~」では、宮古市のがれきが再生され、アートとなった。上/本堂外に置かれた「東北に出現したがれき龍、東京・護国寺に降り立つ」下/本堂の中には、「虹色の龍」。その下には、宮古の子どもたちが描いた絵が敷かれている。

 次に向かった宮古市では、高台で被災を免れた「千徳学童の家」の子どもたちと「旅するクジラ」をつくりました。宮古市では、海岸から遠い地域の子どもたちの中には、がれきを知らない子もいましたが、「みんなの大切なものを描いてください」と呼びかけると、思い思いに車や電車、また友情や家族、友達といった文字を描いてくれました。このときにつくったクジラは、東京の護国寺に奉納。そして、群馬県の中之条町・高山村・東吾妻町の3町村が、宮古市のがれきを受入れた縁から、群馬と宮古の子どもたちが一緒に「旅するクジラ」をつくるイベントとなりました。

 華道は、生きている花をいつ、どのように切り、どう生けるか、とても決断力が必要とされます。的確な決断がなければ、花は刻一刻と死んでいくからです。人も花と同じだと私は思います。そして、日本が大きな器だとしたら、そこに人という花をきれいに咲かせる=再生のお手伝いをさせてほしいと思い、この活動を行っています。この夏の九州地方の豪雨のように、自然災害の被災者は東北だけでなく、いろいろなところで苦しみ、助けを待っています。今夏には、全国から集められたがれきを“よみがえり・再生”の地である熊野に集め、そこを再生と五穀豊穣を祈るまほろばにしたい、とも考えています。

 子どもたちとたくさんの人の力を借りて、がれきに希望の花を咲かせる「平成はなさかじじぃず」は、これからも活動を続けていきます。

前野博紀
まえの・ひろき●1970年福井県生まれ。同志社大学卒業。草月流師範。華道の域を超え、変幻自在の技巧や奇抜な構成で一夜にして大型作品を出現させるなど、そのスケールの大きさから「現代の若冲」「花の建築家」などとも呼ばれる。近年は、メディアへの出演も増え、今、もっとも注目される華道家である。

※前野博紀さんのがれきに花を咲かせましょうプロジェクトのサイトも立ち上がりました。
kouikishori.env.go.jp/flower/

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