月刊ソトコトでは、トヨタの協力により、「ソトコト環境移動教室」を開催しています。子どもたちと一緒に体験するエ コロジー。あしたの地球のために、いまできることは?

そんなコンセプトから、毎月一回、様々なジャンルで活躍さ れる方々を講師として迎え、子どもたちと一緒にフィールド ワーク型の環境スクールを開催。

講義プログラムは、日本各地で活動されているNPOやNGOの 方々との協業で行っています。

ここでは、環境移動教室のレポートや、参加いただいた講師、 NPO/NGOのスタッフの方々のプロフィールも紹介しています。

今月のソトコト環境移動教室

 

右上/清水寺の子安の塔。安産祈願の子安観音を祀る。右下/散策のはじめに、国有林の成り立ちの説明を受ける子どもたちと、引率のエンロー先生。左上/国有林の歴史や、現在生えている樹種とその保全活動などを子どもたちに説明する福田さん。左下/高台寺山国有林の中で、一番長生きのスギを示す元山さん。

 

上/タラヨウの葉を手にする子どもたちと水谷さん。右中/タラヨウの葉に木の枝で字を書いた。右下/カナメモチの葉。常緑樹だが若葉は赤い。左下/スギ、ヒノキ、コナラ、シイ、アラカシなど針葉樹と広葉樹が混在する高台寺山国有林。

 

右/ヒノキの間伐作業を行う元山さんと子どもたち。まず、木を倒す方向の幹に「受け口」という切れ込みを入れ、その逆側からノコギリで切る。倒れる瞬間、「ティンバー(倒れるぞ)!」と、掛け声をかける子どもたち。左上/間伐されていない部分の森は暗く、下草も生えていない。間伐することで森に光が入り、適度に下草が生えることで、保水力の高い健全な森となる。左下/玉切り作業に初めて挑戦する女の子たち。森の中に、ノコギリを引く音が響いた。

 

右上/ウラジロの葉を飛行機にして飛ばしたり、頭にのせておどける子どもたち。右下/高台寺山国有林の散策路沿いの木には説明パネルが取り付けられ、木の特徴を理解できるようになっている。左/木の幹を叩き、梢を見上げ、葉に触れ、香りを嗅ぐ。五感をフルに使って、子どもたちは森を学んだ。

 

 日本の歴史・文化を育んできた京都・東山。その山麓にたたずむ清水寺の境内に集まったのは、京都インターナショナルスクールに通う45年生の女の子たち。アメリカ、イギリス、オーストラリア、スウェーデン、日本など国籍もさまざま。京都インターナショナルスクールは環境学習が盛んに行われている学校で、引率するアイザック・エンロー先生は、「例えば、ゴミのリサイクルをテーマにリサイクルセンターを見学し、調べた結果を校内や他校で発表するなど、環境学習を行っています。『京都議定書』が生まれた京都に住んでいるのだから、少しでも地球温暖化を止めていく方法を、日頃から子どもたちに考えさせています」と話す。
  清水寺境内の裏手から山へ向かって歩き出した子どもたちに、「清水寺に来たのは初めて?」と声をかけるのは、有限責任中間法人more trees(モア・トゥリーズ)の事務局長・水谷伸吉さんだ。音楽家・坂本龍一さんの呼びかけで設立されたmore treesは、間伐など森林保護活動を行いながら、CO2削減を呼びかけている。
  女の子は、「ここに来たのは2回目。でも、こんな山道があるのは知らなかった」と、高台寺山国有林の散策路を元気よく歩く。先導してくれるのは、林野庁京都大阪森林管理事務所の所長・福田淳さんたち。
「国有林には、もともとお寺や神社が所有していた森を、明治維新後に編入したところもあります。ここ、高台寺山国有林も江戸時代まではお寺や神社の森でした」と、子どもたちに説明する。この森は、昭和9年に日本を襲った室戸台風によって木が倒れ、全滅してしまったという経緯がある。その後、林野庁が自然景観にも配慮しながら木を植え直し、復旧させた森なのだ。
「でも、この木は室戸台風にも倒れなかったんだよ」と、斜面に立つ大きなスギの木の幹を叩くのは、京都大阪森林管理事務所の元山英樹さん。「この木、何歳だと思う?」。
「70歳?」「1000歳?」
「正解は、200300歳。この辺りで、いちばん長生きの木なんだよ」
  子どもたちは驚いてスギの木を見上げ、周囲が3メートルほどもある幹を元山さんと一緒に叩いた。

 

 

 

 多様な樹種が育つ森づくりを行う高台寺山国有林。スギを植える適地であることを示すアオキ、草木染に葉の灰を使うシロバイ、葉先がギザギザしているアラカシなど、一本一本の特徴を説明してくれる元山さんの言葉に耳を傾けながら、子どもたちは森を進む。
  タラヨウの前に来ると、「この木の葉には字が書けるんだよ」と、元山さんは落ちていた葉を拾い、裏側に木の枝で字を書いてみせた。
「本当だ!」と、子どもたちは葉を拾い、“Hi, I’m Lina”などと、森に呼びかける、思い思いの挨拶をしたためる。
「まさに、自然の葉書だね」と、水谷さんも子どもたちに交じって自分の名前を刻んでいた。
  湧き出す清水でのどを潤し、コナラに発生するキクイムシの駆除対策を学び、ウラジロの葉で作った飛行機を飛ばしながら、木漏れ日の森を歩く子どもたち。山頂付近のヒノキ林まで歩いたところで、「ここで間伐作業を行います」と、元山さんが子どもたちを集めた。
「間伐されていない森には日が差さず、下草も生えません。ヒノキの鱗片状の葉が落ちて土の表面を覆い、雨を吸い込めなくしてしまいます。そうすると、木が育たないし、大雨が降れば土を根こそぎ流し取ってしまいます。木の生長を促し、雨の被害を防ぐためにも、きちんと間伐を行う必要があるのです」
  子どもたちは理解し、元山さんが行う間伐作業を見学した。そして、間伐したヒノキを台にのせ、玉切り作業を行った。
「刃の長さをいっぱいに使って、引く時に力を入れて切るんだよ」と、元山さんがノコギリの使い方を教える。
「うまく切れない」と、弱音を吐きながらも、女の子たちは懸命にノコギリを引き、額に汗を浮かべながら、直径十数センチあるヒノキをようやく切り落とした。
「やった! 切れたよ」と、女の子は切り落とした木片を拾ったが、手にしたとたん「濡れてる!」と声を上げて水谷さんに見せた。木片の断面を触れると、しっとりと濡れるほど水分が含まれていた。
「春だから、水をたくさん吸い上げたんだね」と、水谷さん。「お風呂に浮かべるといい香りが楽しめるよ」と教えられると、「そうする!」と、女の子は木片を大事そうに袋に入れた。

「僕は納豆が好物なのですが、原料の大豆はほとんどがアメリカやカナダ産。遠い国から船で運んでくるわけですから、それだけ燃料を使い、CO2を多く発生させています。フードマイレージを考え、輸送によって排出されるCO2を減らすために、また、日本の穀物自給率を高めるためにも、なるべく国産大豆を使った納豆を買うように心がけています」と言う水谷伸吉さん。食品だけでなく、木材も同様に“ウッドマイレージ”という考え方があり、普及することを望んでいる。「海外の木よりも、国産材を使った家具や雑貨を選ぶようにしています。FSC認証の木材を選ぶのも一つの方法。ただ、木は食品表示のようにトレーサビリティが詳細ではない場合が多いので、産地がわかりづらいのですが」。食品、木材、そして生活全般の“マイレージ”を少しずつ考えていきたい。

 

高知県・檮原町をはじめ、森林の育成によるカーボンオフセットの普及活動を行うmore treesの事務局長、水谷伸吉さん。
http://www.more-trees.org/

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