今月のソトコト環境移動教室
ソトコトは、読者の皆様や、NPO・NGOで活動されている方々のボランタリーライフを応援していきます。
このホームページは、誰もが参加できる様々なNPOやNGOの活動を紹介するイエローページや、子供たちのための情報教育プログラム、ボランタリーライフを積極的に楽しみたい方々のための掲示板・Blog、イベントカレンダーなど、all freeで公開するサポートサイトです。
キーワードは、「LOVE&HARMONY」 。
ソトコトは、人と地球が共鳴しあう、楽しいボランタリーライフを応援します。
月刊ソトコトでは、トヨタの協力により、「ソトコト環境移動教室」を開催しています。子どもたちと一緒に体験するエ コロジー。あしたの地球のために、いまできることは?
そんなコンセプトから、毎月一回、様々なジャンルで活躍さ れる方々を講師として迎え、子どもたちと一緒にフィールド ワーク型の環境スクールを開催。
講義プログラムは、日本各地で活動されているNPOやNGOの 方々との協業で行っています。
ここでは、環境移動教室のレポートや、参加いただいた講師、 NPO/NGOのスタッフの方々のプロフィールも紹介しています。
「ゴミに埋め尽くされた里山でしたが、自然を愛する人たちの努力によって今の姿になりました」と、古民家の前でレンジャーの丹さんが紙芝居を使って教える。「山にゴミを捨てるなんて、ひどい!」と子どもたち。
上/昔の家が1年間で使う薪は、右に見える程度の大きさの山があれば賄えた。右下/古民家の土間で蜂須賀さんが話す。「屋根はススキ、柱は山の木、壁には土、土台には石。この家は、身近な自然にあるもので建てられているんだ」。左中/昔の農業の必需品、肥桶。左下/古民家の脇に積まれた燃料の薪。
右上/田んぼで見つけたアズマヒキガエルの卵。右下/冬に産卵するヤマアカガルはすでに孵化してオタマジャクシに。中上/タネツケバナを食べる子どもたちと白井さん。公園内での植物採取は禁じられているが、今回はNPO birthの環境教育活動として決められた場所で少しの草花を摘んだ。中下/スミレの花を嗅ぐ女の子。左/昨秋に収穫した稲穂を手に「1束でお茶碗1杯ぐらいのお米がなるよ」と蜂須賀さん。
上/ボランティアスタッフに教えてもらいながら、雑木林の笹を刈った子どもたちと白井さん。右下/公園の一隅には、ゴミがまだ残っている。中下/笹を刈ると、見えなかった草花が顔を出す。左下/「笹刈り、初めてだけどうまく刈れたよ」と女の子。
「懐かしい風景ですね」と、公園内に立つ里山の古民家を仰ぎ見ながら、今回の講師であるミュージシャンの白井貴子さんが微笑む。「東京にこんな豊かな自然が残っているとは知りませんでした」。
しかし、この東京・武蔵村山市にある都立野山北・六道山公園は、10年ほど前まで、里山と呼べるような状態ではなかった。人々が田畑を営むのをやめ、雑木林も放置され、ゴミ捨て場にされていたのだ。東京都が1995年、公園として整備を始めたが、その時回収したゴミの量は、なんと4トントラック9000台分。現在は、公園を管理する『西武・狭山丘陵パートナーズ』に所属するNPO法人『NPO birth』などが、ボランティアとともに公園の手入れを行いながら、訪れる人々に里山を案内している。
「そうしてようやく、昔ながらの里山の風景がよみがえり、古民家も再現されたのです」と、NPO birthスタッフで、レンジャーである丹星河さんが、公園の成り立ちを紙芝居で子どもたちに教えることから、今回の環境移動教室が始まった。
真剣な表情で紙芝居に見入っていた子どもたち。紙芝居が終わると、同じくレンジャーの蜂須賀公之さんに導かれて、公園内に建てられた古民家の土間へ入った。
「みんなの家では、どうやってご飯を炊いている?」
「電気とか、ガスとか」
「昔は薪を使っていたんだ。お風呂も暖房の囲炉裏も」と、蜂須賀さんは土間のかまどに手を触れる。「じゃあ、薪はどこから取ってくるのかな?」
「山?」
「そうだね」と蜂須賀さんは子どもたちを古民家の外へ連れ出し、裏山を指さした。「あれが、紙芝居にも登場した『丸山』だ。使用人を含めて20人が住んでいたこの家のエネルギーは、だいたいあの丸山1個分の薪で賄っていたんだ」
「山1個分?」と、子どもたちは驚いた顔で丸山を眺める。
「日本は今、エネルギーのほとんどを外国から買っているけれど、昔は建物も食べ物も、生活に必要なエネルギーも、ここから見える範囲の自然を上手に利用していたんだよ」
「だから、昔の人は自然を大切にしたんだね」と、白井さんが子どもたちに語りかける。「だって、山がなくなるとご飯が食べられなくなっちゃうんだから」。
子どもたちはうなずいた。
「戦後、貧しかった日本ではみんな一生懸命働き、便利で合理的な社会をつくってきた。自然を壊してまで。でも、これからの時代は違う。人と自然が一緒に生きられる未来の社会を、君たち自身がつくっていかなければいけないんだよ」と蜂須賀さんが言うと、子どもたちは「つくる!」と、丸山を見上げながら力強く答えた。
古民家の北側には田んぼが広がり、白い花をつけた野草が早春の風に揺れている。
「この花、食べられるんだよ」と、この日は特別に、畦道から田んぼに下りた蜂須賀さんはその野草を摘んで食べた。
「食べられるの?」と、子どもたちは驚いた様子だ。
「どんな味がするかな?」
子どもたちは花を摘み、おそるおそる口に運ぶと、「タマネギみたい」「大根の味に似てる」「ちょっと、辛い」と、複雑な表情をした。
「そう? おいしいよ」とは、白井さん。「ワサビみたいな味だね」。
「カイワレ大根の味に似ていな
い?」と、蜂須賀さんが言う。
「たしかにそうだね!」と、子どもたちと白井さんは顔を合わせてうなずきあった。
このタネツケバナのように、小さな草花が春先に咲くのは、生存競争を勝ち抜く一つの方法だと、蜂須賀さんが教えてくれる。「春になって大きな植物が出てくると、小さな植物は日陰になって育たない。だから、2月3月の早い時期に咲いちゃうんだ。それも作戦なんだ」。
湧き水の溜まった田んぼでアズマヒキガエルの卵を見つけ、開花しそうな山桜の蕾に触れた子どもたちは、田んぼの周辺を散策しながら里山の森の中へ歩いていった。
この日、森の中では10人ほどのボランティアが、手に剪定バサミを持ち、里山の手入れのひとつである笹刈りを行っていた。
「今、みんなで笹刈りをしています。スミレやシュンランといった里山の植物の生長を妨げるアズマネザサを刈り取っているのです」と、コーディネーターの矢島万理さんが子どもたちに説明する。「いろいろな植物が生えると雑木林の生態系が豊かになり、動物も棲みやすくなります。だから、みんなも笹刈りを手伝ってね」。
「わかった。手伝う!」と子どもたちもハサミを手に、白井さんと一緒に笹刈りをはじめた。
「ゆっくりでいいから、気をつけて」と、ボランティアの方々が笹刈り初体験の子どもたちの手を取る。「ハサミの刃は地面に平行にして」と、笹の切り方はもちろん、笹の下に見つけた植物についても教えてくれる。
「この青い実は何?」
「それはジャノヒゲの実。中に入っている種は紙鉄砲の玉にして遊べるんだよ。ジャノヒゲは残して、笹だけ刈ろうね」
「あっ、スミレ」と、女の子が笹に埋もれて咲いているスミレを発見した。
「笹刈りをすると、こんな可愛い草花が雑木林に戻って来るんだよ」と、里山の手入れの大切さを教わりながら、女の子は可憐なスミレの花をじっと眺めていた。
神奈川県の環境大使、さらに環境省の3R推進マイスターとして環境啓発活動を行っている白井貴子さん。「神奈川にも戦後間もなくの頃は、里山が3000か所以上あったと言われていますが、現在は50か所足らず。私は藤沢市で生まれ育ったのですが、ついこの間、子どもの頃に駆け回った山や田んぼが開発によってなくなってしまったのです」と、寂しそうに語る。海や山が大好きな白井さんは少しでも自然に近づこうと、6年前、伊豆に森を購入した。「3000坪ほどの小さな森。でも、買ったばかりの頃、森を売ってほしいと話がありました。もちろん売りませんでしたが、何か開発するつもりだったようです。私も少しは森林保護の役に立ったのかなと、胸をなでおろしています」。これ以上、里山が減少しないよう、身近な自然に目を向けてほしいと訴えていた。 |
「森に家とスタジオを建て、自給自足の暮らしをするのが夢」という白井貴子さん。発売中のアルバム『地球〜HOSHI〜』でも自然の大切さを伝える。 |
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